君と僕の日常

 何処に行くとか、誰と会ったとか。あんな事があったとか、今度こんな事があるだとか。
 束縛や監視みたいでめんどくさい。退屈な時間。そんな会話、何が楽しいんだって。
 今までは、ずっとそう思ってた。

「ほんでな、そいつが……て。あー、もうこないな時間か。通りでねぶい思った……」

 携帯の向こう。盛大に欠伸をしているのが分かる。

「え、ちょっと待てよ。そいつがどうしたんだよ。気になんだろ」
「んー?ああ、そいつがな……箱開けたら……すー……――」
「おい、服部。服部?」

 箱開けたらなんだーっ!?
 もう何度目か分からない、完全寝落ち。静かな寝息が聞こえる。こりゃもう起きない。

「……ったく……また気になる終り方しやがって……」

 ひとつ溜息を吐いて。通話を切り、携帯をサイドテーブルに置く。

「ま。連絡してくる事だけは褒めてやるかー」

 心はオレだけのもので居ろ、そう伝えた事に。証明はどうするんだとか、真面目な顔してそんな事を呟いて。結果、毎晩おやすみコールするとか言い出し、こうして毎晩電話をホントに寄越してるワケだけど。

「律儀っつーかなんつーか……素直におやすみ、だけじゃ終らねーからな、アイツ」

 その電話に出る事が、オレの方の証明にはなってるんだろうか?自分の事意外、なんも考えて無さそうだな。

「今頃、どんな夢見てんだか」

 同じ場所に居ない。同じ景色を見ていない。オレの知らない人たちに囲まれて、オレには分からない日常を生きている。
 そしてそれは、服部から見たオレも同じで。分からない事だらけだから言葉にして、会話を通じて共有している。
 他人から見たら退屈な会話。オレ達にとっては大切な会話。楽しいとか、楽しくないとか、そう言うものじゃない。

「おやすみ、服部」

 服部と通じて、それが分かった。





 小説みたいに、全てが上手くなんていかない。ドラマティックな展開も、トキメキに満ちた日常なんてものもない。へこむ事だらけで、どこにでもある日常しかない。それがオレ達の毎日。
 けれど。
 誰も代わりにはなれない。オレと服部にしか感じられない、幸せや楽しさが沢山ちりばめられた日々。こんな日常は、これから先もずっと。ずっと、ずっと続いてく。

 ……服部からの電話が、無くならない限りは……たぶん。

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