君と僕の日常

 服部と直に会うのは、実際3ヶ月ぶりぐらい。服部もオレも部活やなんやで忙しかったし、そもそも、元からそうしょっちゅう会ってワケでもない。東京と大阪なんだから、まあ当たり前なんだけど。会わない間も、アイツからは結構メールは来てたから、そんな会ってない感じがしなかっただけだ。
 けど、そのメールもあの日以降パッタリ来なくなったから、いざ実際に服部を目の前にしたら、やたら久しぶりな感じがして、ちょっと懐かしささえ覚えた。
 ……ってのは大袈裟か。

「よう、久しぶり」
「おう。元気にしとったかー?」

 超気になる終わり方をした電話。そう思っていたのはオレだけだったらしく、久しぶりに会った服部は、物凄く普通。よく知っている服部、そのままだった。

「ほれ、これお土産。冷凍しといたら暫くもつから」
「どーも」

 差し出された紙袋を受け取ると。

「美味いでー」

 言って、にこり笑う。見慣れた顔。オレの中ではよくある光景。
 だっつーのに。

「どないしてん?」

 はい。思いっきり意識どっか行ってました。

「っ……わ!」
「えぇっ!?」

 戻ってきたらすぐ目の前に顔あるし。ビックリしたよ、そりゃ。するだろ、フツーに。服部はオレの声に驚いたみてーだけど。
 どーでもいいけど心臓バクバクだよ、おい。

「な、なんやいきなり……ビックリするやないか」
「そりゃコッチのセリフだ!ちけーんだよ、お前はっ」

 いつもそうだ。服部はいつも物理的に距離が近い。お前のパーソナルスペースはどうなってんだ。存在しないのか。誰でもウェルカムかコノヤロウ。

「あ……そか。すまん。気ぃつかへんかった。ちゃんと距離とるわ」
「ああ……」

 って、離れ過ぎ。不自然!一緒に歩いてんのに絶対的に不自然!!全くの他人か、ってぐらい距離がある。もう、ホント馬鹿だろコイツ。

「あのな……服部」
「んー?」
「……普通でいい」
「え?あー、離れ過ぎた?すまんすまん」

 天然?なあ、天然なワケ?それともなに?大阪人だから取り敢えずボケてんの??
 何考えてんのかサッパリ読めねー。

「服部……お前さ……」
「なに?」

 実際アホだろ。
 言ってやろうと思ったんだけど。想像以上に何も考えてなさそうな、能天気な顔で振り向いたからやめといた。
 本物に言うのは可哀想だからな。うん、オレ優しい。

「はー……」
「なに急にしんどなってんねん。ほんで、なに?」
「別に……」
「なんやねん」

 起きてからまだそんな時間経ってないんだけど。なんか一日が終わったぐらいの脱力感。疲れた。ホント疲れた。
 ダラダラと歩くオレを見て、休ませようと気を遣ったのかなんなのか。

「工藤。お前飯食った?」
「え?ああ、軽くは」
「そか……オレまだやねん。どっか寄って飯食ってええ?」
「あー?いいけど」

 言って近くの店に入って。

「抹茶白玉パフェ」

 そう服部が言った瞬間。飲んでた水を盛大にふくとこだった。
 服部。パフェは飯じゃねぇ。
 やっぱ、ホントに何を考えてるのか分からないヤツだ、服部。

 なあ、あの時。お前、無言のまま何考えてたんだ……?
 美味そうにパフェ食ってる服部からは、その答えは見えそうにもなかった。

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