君と僕の日常
「何で知らせなかったんや」
言われる事、もう5回。
「だーかーら、お前の手を借りるまでの話じゃなかったし、遊んでる時間的余裕もなかったからだって……何回言わせんだよ!」
「そんでも、一言ぐらい言っといてくれたらええやんけ」
「なんでだよ!お前はオレの母親かっ!!」
苛立ちから、わしわしと髪を掻き毟ってぐしゃぐしゃの頭。
正直、相当メンドクサイ。家族でもなけりゃ恋人でもない。服部はただの友達だ。男なんだから当たり前。その友達に、なんでいちいち行き先を告げなきゃならねーワケ?
しかも、だ。
なんで神戸行った事教えなかったってだけで責められてんの?オレ。おかしくね?おかしいだろ、絶対。
「つーか、そんなにオレに会いたかったのかよ!?そんなにオレが好きか!?ああっ!?」
言っちゃうよな。そりゃ言っちゃうよ。
だからって、『当たり前や。ごっつぅ好きやで』とか言われても困るんだけどさ。服部の事そんな目で見たことねーし。つーか、いつもそんな目で見てたらオレ変態だし。
「……」
って。なんでここで無言だよ。何か喋れよ、オイ、服部。無口なキャラじゃねーだろ、お前。
「……何か言えよ、こら」
ツッコんでみても続く無言に、段々心が不安になってくる。
え、ちょっと……。まさかホントに?服部、ホントにお前……――。
「……すまん。ひつこかったな。ちょぉ頭冷やすわ」
「いや……おい、は……」
服部。
名前を呼ぶ前に通話は切れて。『ツー、ツー……』と、電子音だけが耳に響いた。
「……つーか……」
すっげー気になんだろ、バーロー!!
まあ、当然ながら。その夜オレは眠れなかった。
いや、嘘。ちょっと寝た。しかも、夢に見た。なにをって、服部の夢は夢なんだけど。それが恐ろしくリアルで、恐ろしくエロかった。いや、本気でエロかった。アレはヤバイ。次に服部に会ったら絶対思い出しちまう。どんな顔していいかわかんねー。
って。気持ち悪。じゃなくて、思い出したらアッチが反応しそう……とか思ってるオレってやばくね?あれ?オレ実はそっち系?実は元から変態だった??
いやいやいやいや。ないない。
ちょっと動揺しちまったせいだ。絶対そうだ。そうに違いない。
「どうしたの?新一。ものすごいクマだけど」
「はは……昨日ちょっと寝れなくて」
「ふーん。小説に没頭するのも適度にしなさいよ」
「ああ……」
事実は小説よりも奇なり。
しかし。小説の世界みたいに、波乱万丈な人生は別に要らない。
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