魔法のコトバ
「服部」
「なんや」
まだ少し不機嫌な声。
「そんな声も好きだ」
答えは返らない。
それでも、もう一度。
「お前がどんなでも、オレはきっとお前が好きだ」
ぱたん。
読んでいた雑誌を閉じる音。
「よう恥ずかしい台詞を次々と……」
不機嫌さは消えたが、明らかな呆れ声。
それでも。
「……分かっとる。分かっとるから」
そっと。
ぎこちなく、身体を包み込む感覚。
「完璧に同しやないけど。オレかて工藤が大好きや。ちゃんと、好きやから」
体温だけじゃない。
柔らかな、温かさ。
そっと、瞳を閉じれば、もっと感じる。
「ちゃんと、伝わってるよ」
その一言は。
一瞬で僕を幸せにする。
『好き』
神が、僕らに与えた。
それは、魔法のコトバ。
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