魔法のコトバ

「服部」
「なんや」

 まだ少し不機嫌な声。

「そんな声も好きだ」
 
 答えは返らない。
 それでも、もう一度。

「お前がどんなでも、オレはきっとお前が好きだ」

 ぱたん。
 読んでいた雑誌を閉じる音。

「よう恥ずかしい台詞を次々と……」

 不機嫌さは消えたが、明らかな呆れ声。
 それでも。



「……分かっとる。分かっとるから」

 そっと。
 ぎこちなく、身体を包み込む感覚。

「完璧に同しやないけど。オレかて工藤が大好きや。ちゃんと、好きやから」

 体温だけじゃない。
 柔らかな、温かさ。
 
 そっと、瞳を閉じれば、もっと感じる。

「ちゃんと、伝わってるよ」




 その一言は。
 一瞬で僕を幸せにする。

『好き』

 神が、僕らに与えた。
 それは、魔法のコトバ。

[ 269/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -