真夏の夜の夢
それからの日々は。
それまでは、あまり深くは関わってこなかった奴等とも話す機会が増えて。
つまらないと思っていた学校も。
それなりに、楽しいものだと思える事が増えていった。
その全てに、服部が関わっている。
「服部ー?」
部活が終わって、待ち合せている教室に向かうが。
そこに、服部の姿はまだない。
「剣道部、まだ練習終わってねーのかな?」
窓から、部室がある方を眺めてみる。
剣道部の部室は明かりが消えていて、練習は終わっているように見えた。
「先に帰っちまったか?」
携帯を取り出して、メールを打とうとした。
その視界の片隅。
部室の近くの木陰。
服部らしき姿が映る。
「アイツ……何やってんだ?」
片手を幹に添え、もう片手で胸の辺りを押さえて。
前屈みで、今にも崩れそうな……。
「……服部っ」
立ち上がり。
勢い良く教室を出ると。
無我夢中で階段を駆け下りて。
脳裏に焼きつく、苦しげな様子の服部の元へと急いだ。
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