真夏の夜の夢

 こんな気持ちになる相手を。
 何で忘れてしまっているのか。
 そもそも、本当に忘れているだけなのか?

 ぐるぐる、ぐるぐる。
 その事ばかりが頭の中で繰り返す。



「お待たせしましたー。残飯処理班、黒羽君でーす」

 とてもじゃないが、二人だけでは食いきれない。
 呆れた服部は、すぐに黒羽を呼び出した。
 呼び出しにそっこーで応えるコイツは、ある意味たいした者だと感心する。

「うわ、マジかよコレ。何考えてんだ、工藤」
「うるせーな。いいからさっさと食うの手伝え」
「え、何?その俺様。それが助けてもらうヤツのセリフ?」

 文句を言いつつ、席についた黒羽に。

「すまんなぁ。流石のオレでも、なんぼなんでもコレは……なぁ?」

 申し訳無さそうに、コーヒーを差し出しながら服部が言うと。

「あー、服部は気にする事ねーよ。バカなのは工藤だし」

 オレに対するのとは打って変わって。
 気のいい笑顔を向ける黒羽は。
 昼飯の時から思ってたけど。
 やっぱ服部の事が好きなんだな、と。

 分かった瞬間。
 ちょっとだけイラっとした。

「バカで悪かったな」
「ホントだよ」
「黒羽……おめーな……っ」

 オレの言葉なんて半分無視で。
 黒羽は、しれっとした顔をしながら、手近なものから口に運んでいく。
 その姿を眺めながら。

 そう言えば、幼馴染みではあるけれど。
 こうして一緒に飯を食うとか、今まであんまりなかったな、とか。
 学校も一緒だけど、昼飯一緒に食ったの、今日が初めてだったな、とか。
 よくよく考えてみると、自分がいかにプライベートで人との関わりを持っていなかったか。
 それを思い知った気がして。

「けどアレやな。やっぱ、皆で食う飯は美味しいな」

 服部の言葉に。
 何だか素直に頷けた。

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