真夏の夜の夢

 服部とオレとは、中学の時に初めて出会って。
 その後、同じ推理好きって事で仲良くなって。
 高校に入る頃。
 オレの両親が外国へ行くのをきっかけに、服部は大阪からコッチに出てきて。
 そこから一緒に住むようになった。

 ……らしい。



「なあ。晩飯どーする?何か食いてーモノあるか?」

 電話の脇。
 並べて置いてある、何店舗ものデリバリーのカタログを眺めながらに問うと。

「工藤の好きなモン頼めや」

 答える声はそっけない。

「……なんだよそれ。そーゆーの、一番困るんだけど?」

 不満気に呟きながら服部の方を振り返る。
 と。

「工藤が好きなモンやったら、オレも何でも好きやから。せやから、お前の一番好きなモンでええ」

 ソファ越し。
 恐らく正座するような形で。
 両手を背に乗せて、顔だけ覗かせる格好は。
 よく、電車とかで子供がして見せるような、そんな姿。

「……」

 たぶん、呆気にとられてた。
 無言のまま、じっと見ているオレに。

「……何?」

 小首を傾げて訊く。
 添えられた笑みに。

 不覚にも、少しだけ心臓がドキリと鳴った。

「な、何でもねーよっ。じゃ、勝手に頼むから。後で文句言うなよっ!」
「ゆわへん、ゆわへん」

 電話を架ける指が震える。
 相当な動揺。
 こんな症状は、実際に感じた事はこれまでにないけど。
 読んだ本の中でなら知っている。

「嘘だろ……」

 呼び出し音が止んで。
 出た人に何を頼んだかも覚えてなくて。

 届いた食事。
 その量に。
 愕然としたのは、服部よりもオレだった。

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