We were born to meet.
始まり。
それには色々意味がある訳で。
「……どーゆー事だよ」
帰り支度をテキパキと進める背中を。
不満全開で見つめるが。
「どーゆーもこーゆーも。まんまや、まんま」
片手をひらり舞わしただけ。
全く振り向こうともしない。
「勝手に諦めて終わらそうとか、アカンかったら二度と会わへんとか、そーゆーのムカつくねん。オレん事全無視で、自分に酔うてるだけやんか。腹立つ」
「腹立つってお前な……」
昨晩。
あの後、本当は続けるはずの言葉があった。
それを遮ったのは服部で。
たとえ遮られること無く告げていても、たぶん今と同じ景色だったのかも知れないが。
何となく、ちょっと違ってたんじゃないか、とか。
何となく、言えないようにもっていかれたんじゃないか、とか。
あの後。
まるで何事も無かったかのように、部屋に戻るなり風呂に入ってそっこー寝てた服部を思い出しながらに思う。
「ま、お前のその気持ちがほんまもんやったら、全力でオレん事振り向かせてみぃや」
「なんだよ、その微妙に上から目線」
「知らんのか?こーゆーのはな、先に惚れた方が負けなんやで」
やっと振り向いたと思えば。
あかんべー、とか。
だからガキか、とツッコミ入れたくなるような仕草をして見せるから。
「あー、あー、そうかよ。だったら負けでいいけどさ」
がしがしと後頭を掻きながら。
振り向いた服部の向かいまで歩いて行って。
「それって、振り向くまでずっと追い掛けて来いっつー事だよな」
極近く、真顔で見据えてから。
「つまり、それを言うって事はお前……――」
そこまで言ったところで。
「あー!チェックアウトの時間過ぎてまうっ!!」
「あぁ?」
言わせない。
そんな勢いで腕時計を見て。
くるり背を向けると、バタバタと慌しく鞄に物を詰めだした。
「ほれ、工藤。なにちんたらしてんねん!早よ帰り支度せぇっ」
その様子を、頬を掻きながら見るオレを。
ちらり振り向き見る顔が。
ちょっとだけ、赤くなってるように見えたから。
「……どっちが先か知んねーけど。確かに始まりの日、だったのかもな」
独り言みたいに呟き、笑った顔に。
勢い良く飛んできた枕から。
羽根が数枚、ひらひら舞った。
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