We were born to meet.

 始まり。
 それには色々意味がある訳で。

「……どーゆー事だよ」

 帰り支度をテキパキと進める背中を。
 不満全開で見つめるが。

「どーゆーもこーゆーも。まんまや、まんま」

 片手をひらり舞わしただけ。
 全く振り向こうともしない。

「勝手に諦めて終わらそうとか、アカンかったら二度と会わへんとか、そーゆーのムカつくねん。オレん事全無視で、自分に酔うてるだけやんか。腹立つ」
「腹立つってお前な……」

 昨晩。
 あの後、本当は続けるはずの言葉があった。
 それを遮ったのは服部で。
 たとえ遮られること無く告げていても、たぶん今と同じ景色だったのかも知れないが。

 何となく、ちょっと違ってたんじゃないか、とか。
 何となく、言えないようにもっていかれたんじゃないか、とか。

 あの後。
 まるで何事も無かったかのように、部屋に戻るなり風呂に入ってそっこー寝てた服部を思い出しながらに思う。

「ま、お前のその気持ちがほんまもんやったら、全力でオレん事振り向かせてみぃや」
「なんだよ、その微妙に上から目線」
「知らんのか?こーゆーのはな、先に惚れた方が負けなんやで」

 やっと振り向いたと思えば。
 あかんべー、とか。
 だからガキか、とツッコミ入れたくなるような仕草をして見せるから。

「あー、あー、そうかよ。だったら負けでいいけどさ」

 がしがしと後頭を掻きながら。
 振り向いた服部の向かいまで歩いて行って。

「それって、振り向くまでずっと追い掛けて来いっつー事だよな」

 極近く、真顔で見据えてから。

「つまり、それを言うって事はお前……――」

 そこまで言ったところで。

「あー!チェックアウトの時間過ぎてまうっ!!」
「あぁ?」

 言わせない。
 そんな勢いで腕時計を見て。
 くるり背を向けると、バタバタと慌しく鞄に物を詰めだした。

「ほれ、工藤。なにちんたらしてんねん!早よ帰り支度せぇっ」

 その様子を、頬を掻きながら見るオレを。
 ちらり振り向き見る顔が。
 ちょっとだけ、赤くなってるように見えたから。

「……どっちが先か知んねーけど。確かに始まりの日、だったのかもな」

 独り言みたいに呟き、笑った顔に。
 勢い良く飛んできた枕から。
 羽根が数枚、ひらひら舞った。

[ 120/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -