We were born to meet.
あれはまだ、オレが子供の姿だった頃。
一緒に歩いた街。
桜を眺めている背中に。
「仲のええ兄弟やねぇ」
そんな声が届いて。
「やっぱ、周りからは兄弟とかに見えてんだな」
呟いたら。
「オレにはちゃーんと工藤に見えてんで」
桜を見上げたまま、服部が呟いて。
「いつも。どんな時でも。どんな姿しとっても。お前はお前。工藤は工藤」
続けながらしゃがんで。
伸ばした片手で髪をくしゃり撫でてくる。
その目は優しくて。
けれど、対等の者を映す色。
映しているのが、言葉の通りに工藤新一だと言うのは分かる。
「言葉と行動が合ってねえんだよ」
照れくさくて、邪魔そうに退けた手。
その隙間から。
悪戯っ子の様な笑顔が覗いて。
どきり。
心が鳴る音を隠すみたいに。
ざあ、と。
風と桜が通り過ぎてった。
[ 117/289 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]