We were born to meet.
粒子の細かい白い砂。
それがどこまでも続いて。
誰も居ないその場所に。
二人の足跡だけが点々とついてゆく。
「なぁ、これ。何の貝やろ?」
「……こんだけ研磨されてちゃ元が分からねーけど……」
服部の掌の上。
虹色に輝く、原形を留めていない貝殻が輝く。
「綺麗やから持ってく」
言って。
丁寧に砂を払う。
その仕草、表情に。
まるで酸素が足りないみたい。
心がきゅっと苦しくなってくる。
「そんなモン持って帰ってどうすんだよ」
心を見透かされないように。
自分を誤魔化すように。
わざと冷たい言葉と視線を向けると。
「別にええやろ。記念や記念」
少し頬を膨らませ、口を尖らせながら。
見るからに不満気に呟いて。
「普段はクサイ科白よう吐くくせして。工藤はそーゆートコ冷め過ぎや」
綺麗になった貝を、そっとハンカチに包んでポケットにしまった。
「お前こそ。普段はロマンの欠片もねーくせに、そーゆートコだけ乙女だな」
「……誰が乙女や、誰が」
じとり見てくる、その瞳さえ……――。
そんなことを思う自分は、やっぱりもう手遅れだ。
思ったら、何か笑えてきて。
「はは……まぁ、こんな凛々しい眉毛の乙女も居ねーよな」
「眉毛の問題か。ちゅうか、何笑てんねん」
「何でもねー。そろそろ行くぞ」
「待てや。気になるやろ。こら、工藤!」
背を向けて先に歩き始めて。
追ってくる服部を少し振り返ったら。
納得できない。
そんな表情で。
それでも大人しく着いて来るから。
やっぱり可笑しくて。
また笑ったら、頭を軽く小突かれた。
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