桜の雨

 それから夕暮れまで。
 他愛もない話をしながら。
 影踏み。
 水切り。
 一頻り遊んで。

「また、会える?」

 去り際、掛けた言葉に。

「……また、桜が咲いたらな」

 言って平次が笑うと。
 風に、ひらひら桜が舞った。





 約束通り。
 次の年も、その次の年も……。
 平次は川原の桜が咲いたらそこに居た。

 けれど、会えるのはたった一日。

 その一日の為。
 新一は、桜の季節はいつもその道を通った。
 幼稚園が終わって。
 小学生を超え。
 中学生になった今も。
 例えそこが、遠回りの道でも。

 平次がそこに立っている。
 それだけを待ち望んで。

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