Happy Valentine's Day

 初めに寄ったのは、ラッピング等のパッケージ用商品を多く扱う小さな店。
 次はキッチン雑貨。
 そして今居るのが、お菓子用の材料も豊富に揃う、結構大きいめの輸入雑貨屋。

「……これって……」

 店内の装飾と、二人の買い揃えているであろうものを総合して考えて。
 導かれる答えは一つ。

「こんなトコで何やってんだ?」

 答えが出た所で、二人の後ろに立って声を掛けると。
 服部が驚いたような顔でこちらを向いた。

「……工藤……?」
「あれ、工藤君。何でココに?」

 続いて振り向いた奥井も、少し驚いたような顔をしている。

「いや。カフェで本読んでたんだけど。帰ろうとしたら、見知った二人が見えたからさ」
「そ……そか」

 奥井はすぐに普段の表情に戻ったものの、服部の方は動揺していると言うか。
 バツが悪そうと言うか。
 揺らいだ瞳が泳いでる。

 オレに見られたくなかったっつー事は。
 やっぱ隠し事だった訳で。
 今もきっと、頭の中では一生懸命言い訳を考えている。
 そう思ったら、酷く気分が悪くなって。

「デートの邪魔しちまったかな?悪いな。ごゆっくり」

 言って、背を向けたら。

「ち、ちゃうっ。待って、工藤」

 服部の声が聞こえたけど。
 それに振り向く事はせず。
 手に商品を持っていたから、追い掛けて来ない事も十分判ってて、早足に通路を抜けて店を出た。

 案の定、追い掛けて来れない服部の。
 去り際に視界の端に映った表情は。
 まるで捨てられた犬。
 そんな表情だったけど。
 きっとオレの表情も遠からず、だっただろうから。
 絶対に見られたくなくて。
 店を出てすぐ、駅までの道を、全力で走った。

 その日の夜は。
 服部から何度も着信が残っていたけど。
 何となく、架け直す気になれなくて。
 放置したまま、次の日に会った服部は。
 朝から物凄く不機嫌だった。

 そして。
 機嫌を損ねたままだったのか。
 その後数日間。
 服部とは一度も口をきかないまま、今日に至っている。

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