Harmony of December

 紙の証明が無くても。
 法的な保護が無くても。
 二人が互いに認め合うなら。
 誰が何と言おうと、オレ等は夫夫だ。

「珍しくえらい雪積もってんで」

 カーテン開けっ放しの寝室は。
 雪の輝きで、ほんのり明るい。

「明日は雪かきが必要かもな」
「オレ雪だるま作る」
「いや、手伝えよ」

 色黒の、健康的な肌も。
 この光の中では白っぽく、普段よりも艶めかしい。
 埋めていた顔を上げて。
 すっとを胸を撫でながら、上から覗いた瞳が光に揺れる。

「ところでオレさ、決めてんだけど」
「なにを?」

 頬に触れる伸ばされた手。
 その手は、身体の熱さと反して、少し冷たい。

「お前んトコに一緒に住む」
「え?あっこ、そないに広くないで。お前の部屋とか別にとれな……」
「ダブルに変えて、一緒に寝たら問題ねーだろ」
「オレ的に問題あるよな気ぃするねんけど」
「オレ的には全く問題ない」

 にこ、と笑ってみせると。
 少し引き攣った笑みが返された。

「大体、新婚早々別居はねーだろ」

 頬に触れ。
 親指の腹でなぞる唇が柔らかい。

「別に、一緒に住むなら住むで、ココに住んだらええやんけ。こっちのが広いし」
「ここはオレの親の家だから。オレ達の家がいいんだよ」

 食む様に緩く。
 何度も唇に自分のそれで触れながら。
 膝の裏に通した腕で、ゆっくり脚を引き上げ、その間に身体を潜り込ませる。

「……もっと広い部屋探そ……」
「ははは。可愛くねーな」

 何時もなら静かに侵入する所を。
 意地悪の為に一気に貫くみたいに進めたら。
 組み敷いた身体が大きく跳ねて、うっすら目尻に涙が浮かんだ。
 腕を掴む両手の強さが、その痛みの強さを伝えているが。
 思い切り締め付けられているオレも痛い。

「力抜け、平次。萎えちまう」
「知らん……自業自得やろっ」

 落ち着かせるように。
 額、瞼、唇。
 それぞれに優しく口付けて。

「ちゃんと、優しくすっから……大丈夫だから」
「嘘吐いたら……二度と、させへんからな」
「嘘じゃねーよ」

 少しだけ睨むように見てくる瞳の。
 目尻の涙をそっと拭って。
 微笑んでみせると、平次の瞳も和らいで。
 オレを締め付ける力も緩んでゆく。

「愛してるよ」

 言って、また額に口付ける。

「愛しとってこの仕打ちかい。明日早々に薬局行かなあかんかと思ったやないけ。胡散臭い」
「はは、血出てねーし。切れてねーって、大丈夫」
「暗くて見えへんだけかも分からんやろ。このS」
「ごめんって。機嫌直せよ」

 抗議で尖らせた唇を数度啄んで。
 割り入れた舌で、口内を愛撫しながら。
 さっきとは違って、ゆっくりと。
 優しく、慈しむように何度も腰を振る。

「痛いか?」

 訊いたら。
 平次は首をふるふると横に振り。

「じゃ、気持ちいい?」

 その問いには小さく。
 だけとはっきりと。
 今度は縦に首を振る。

「オレも。めちゃくちゃ気持ちいい」

 笑ってみせると。
 応えるように柔らかく、平次も微笑んだ。



 聖なる夜にすら、禁忌を犯すオレ達を。
 例え神が許さなくとも。
 世界中の多くの人が幸福で。
 祝福と笑顔を向けてくれる。
 そんなクリスマスが。
 オレ等が決めた、結婚記念日。

[ 140/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -