魔法のコトバ

 おかしい、と思った事は何度かあった。
 寧ろ、気付かない訳がない。

 だけど、そんな事はある筈がないと、自分に言い聞かせていた。
 でなければ、工藤の傍には居られなかった。

 ……どうして?

「そもそも、こうなった原因を作ったのは自分じゃない」

 志保の言葉に、納得がいかないと言った表情を浮かべ、服部が身を乗り出す。

「何でオレが原因やねん!オレは工藤には何時だって普通に……」

 志保の瞳が冷たく見えて、一瞬言葉を躊躇った。
 その隙を衝かれる。

「そうね。アナタは普通に接して居たのよね。一番大切で、一番大好きな『お友達』として。アナタ以外から見れば、普通の『お友達』以上の態度で」

「―――……っ!」

 似たような台詞を、いつか和葉からも言われた事があった、と思い出す。
 脳内に、様々なシーンがフラッシュバックしては消えてゆく。

「無意識にしろ、好きにさせたのはアナタ自身の行動。そして彼の心を、秘めておけない程に追い詰めていったのもアナタ。そのアナタが、最後は彼の心にナイフを突き刺すの?」

 最早、返す言葉は見つからず。
 力の抜けた体は、ソファに崩れ落ちるように沈んだ。

「ねぇ。彼が持つアナタへの想いと、アナタが持つ彼への想い。それって、そんなにまでも違うものなのかしら?」



 気付いていると意識してしまえば、自分の想いも無視できなくなってしまう。
 だから、気付かない振りをしていた。
 
 プラトニックラブと呼ばれるもの。
 それが、自分の中の彼への想いだ。
 彼を知る度に、育った気持ち。

[ 266/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -