Harmony of December

 二人には多いと言っていた食事を。
 何だかんだで、結構な量を服部は食っていて。
 
「残して捨てる事になったら勿体ないやろ」

 ケーキを食いながら言う横顔に。

 だからお前は主婦か。
 別に明日食ったらいいだろ。
 つーか、その体のどこにそんだけの量格納してんだよ。

 そんなツッコミを心の中で呟きながら。

「……ところで。オレからの暗号は解けたよな?ガキでも分かるレベルだし」

 告げると。

「へ?」

 と。
 まるで考えていなかった事が丸解りの、間抜けな面がオレを向く。

「……メッセージ。あれ、全部で一つの言葉になってんだけど……」
「え、嘘」

 ケーキ皿を置いて。
 まずは手に取ったグラス。
 その文字から、次のフォトフレーム、その次の……――。
 次々とメッセージを追ってゆく服部。

「ガキでも分かるっちゅう事は、初歩の初歩……えーと……Mar……」

 最後のメッセージの前。
 暫し黙ったまま、固まってるみたいに動かなかったが。

「……ムリやろ」

 ぽつり。
 小さく呟いた。

「どうして?」
「なんでて」

 振り向いた瞳は、困ったように小さく揺れる。

「ここが日本だからか?じゃ、許される国だったとしたら?」

 書面のカタチ。
 確かにそれは、世間が認めてくれる証だけど。

「答えは?」

 だけどそれは。
 絶対に必要なものとは思えない。

 必要なのは、互いとその気持ちだけ。

「……Yes.」

 変わらない。
 そんな服部も。
 やっぱり少しだけ変っていて。
 昔よりもちょっとだけ強く。
 ちょっとだけ素直になった。

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