Harmony of December
ほんのりピンクのシャンパンと、カジュアルフレンチのオードブル。
丸ごとのチキンに、華やかにデコレーションされたシュー・ツリー。
多過ぎる程の食事と、クリスマスツリーの下に置かれた互いのプレゼント。
二人きりのパーティは準備万端。
「なあ、コレ。黒羽とかねーちゃんらとか呼んだ方が良かったんやないか?いくらなんでも……」
「なんだよ。そんなにアイツらに見せつけたかったのか?意外と大胆だな。黒羽に至ってはきっと暴れるぜ。まあ、呼びたいなら今から連絡してみてもいいけど」
「……いや、嘘。呼ばんでええ」
「そ?」
架けるふりで取り出した携帯をしまって、にこやかな笑みを向けると。
乾いた笑みを浮かべ、どこか遠くを見ている服部が映った。
「さて。じゃ、始めるか!服部、グラス取って」
「おう……て、なんやこのグラス……」
フロスト加工されたグラス。
その側面にあるメッセージを、しげしげと眺めて。
「えーと……これ、英語ちゃうな。フランス語……?」
渋い表情でぶつぶつと読み直す。
その背中を。
そっと、包み込むように抱きしめて。
「どんなに時が経っても。例えお前が変わっても。初めて好きと告げた日のように。あの時も、今も。そしてこれからも。ずっとお前を愛してる」
耳元で囁くと。
その縁が、少し赤みを帯びてくる。
「……人がまだ読んどるのに……。ちゅーか、なんやその科白。文で見ても恥ずいっちゅうのに、わざわざ音で表すなや」
「今回は、ちゃんとオレの声でも届けたいんだよ」
「なんで」
包み込む腕を解いて。
肩を掴んで向き直らせた。
その顔は、やっぱり耳と同じでほんのり赤い。
「取り敢えず、乾杯しようぜ?続きはその後」
「まだあるんかい」
に、と笑ってクラスを受け取って。
シャンパンを注ぐオレの背後で。
「とんだ羞恥プレイや」
とか。
ぶつくさ呟く声が聞こえる。
少し不貞腐れているようにも見える表情に笑いつつ。
シャンパンを注いだグラスを渡して。
「それじゃ。二人の5年目のクリスマスに乾杯」
合わせたグラス。
そこから響く、高い音。
弾ける炭酸の小さなリズムに。
服部の表情も、すぐに何時ものそれへと戻っていたけど。
その後に続いた、あちこちに散りばめられたメッセージの数々に。
その時々で、服部の表情は様々に変わって。
「……結構、普段からオレこう言う事言ってると思うけど。ホント慣れねーのな」
一々照れるその様が楽しくもあり。
また、可愛くもあり。
「こんなん慣れるかっ」
変わらない。
その姿が、嬉しかった。
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