Harmony of December

 家に戻ると、まだ服部は戻っていなくて。
 二人で飾り付けたツリーだけが、暗い部屋の中チカチカと輝いていた。

「オレも寄り道してたから、戻って来るまで時間かかったけど……アイツどんだけだよ」

 開きっぱなしのカーテンを閉めに窓際へと寄ると。
 チラチラと白いモノが舞い落ちてくるのが見えて。

「……雪降ってきてんじゃん。ホントに何やってんだ?」

 呟きながらカーテンを閉め、振り返ると同時。
 ソファに置いたコートのポケットの中。
 携帯から、服部専用の着メロが聞こえた。

「服部?お前、何して……――」
「……見っからない……」
「は?」

 聞こえた声は非常に弱々しい。
 と言うより、悪戯がバレた時の子供のような。
 何ともバツの悪そうな……。

「一緒に歩いたトコはみな戻って探してん。けど、ドコにも落ちてへんねん……」

 泣いてんじゃねーか?
 そうとも思えるようなその声に。
 取り敢えず、頭の情報を整理する。

 落ちていない、と言う事は。
 持っていた何か。
 身に着けていた何か、を落とした事になる。

 持っていたのは携帯と財布位なモンで。
 携帯は今使っているから対象からは外れる。

 家に来た時の服部と。
 駆けて行った服部。
 その間で変わっている所は……?

「……。指輪か……」

 付き合い始めたばかりの頃。
 オレを愛している証に着けとけ、と渡した指輪は。
 あの日以来、ずっと服部の首に。
 チェーンに通され、下げられていた。

「初めて貰たプレゼントやったのに。しかも、よりによってこないな日ぃに……。ごめん、ホンマ合わす顔があらへん」

 落したら死ねるとか言ってた気がしたが。
 取り敢えず死んでなくて何よりだ、とか思いつつ。

 何年も前の約束をずっと守り続けて。
 初めて貰ったからって、大切に思ってくれていて。
 その気持ちが凄く嬉しくて。

「……バーカ」

 呟いた言葉に。

「……もっぺん探してみる……」

 怒ってると勘違いしたのか。
 更にしゅんとした声が返ってきたもんだから。
 切られる前に、慌てて口を開いた。

「いや、待て待て。ホントにバカだな、お前。怒ってんじゃねーよ」
「……バカとか2回もゆうなや」
「だってバカだろ」
「3回目」

 声が、いつものそれに戻った。
 それを確認して、一呼吸。

「……戻って来い。もうじき、飯も届くから」

 自分の中では最高に優しい。
 そんな声で伝えると。

「……。分かった。すぐ帰る」

 安心したような。
 きっと顔には笑みが浮かんでいる。
 そんな声で答えて、通話は切れた。

 きっと冷え切って戻って来るから。
 取り敢えずミルクでも温めておこう。
 思って、キッチンへと向かった。

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