Harmony of December
「ケーキは買うたし、チキンとオードブルは夜に届くし、シャンパンはあるし……あと用意するモンあったか?」
スタスタと少し先を行くオレの後ろで。
指折り数えながらに呟いて。
小首を傾げて訊いてくる。
「いや?」
立ち止まり、振り返り答えると。
「そか。したらオレ、いっぺん自分ち帰ってもええ?さっき思い出してんけど、プレゼント家に忘れてしもた」
苦笑いを浮かべながら、頬をポリポリと掻いて。
答えを待つように、服部が少し上目にオレを見てくる。
「ああ。構わねーよ」
言って笑みを向けると。
服部の手からケーキの箱を受け取って。
「行って来い」
片手を舞わしたら。
ぱっと笑顔が咲いて。
服部は、そのまま駅のある方へと走って行った。
「……ボール投げられた犬みてーだな」
人混みに消えてゆく背中を眺めていたら。
その背中に、昔の服部の姿が重なって見えて。
「変らねーな、あいつは」
次々に蘇える。
出会った頃から今までの、沢山の服部。
気が付けば、何だか仲良くなっていて。
気が付けば、何かと一緒に居る事が多くなって。
気が付けば、いつも隣に笑顔があって。
気が付けば……。
「オレは……変わったかな」
ふ、と小さく笑みをこぼして。
くるり、方向を変えると。
駅へ続く道から外れ、路地の緩い坂道をゆっくりと上った。
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