Forbidden fruits

 服部の中で。
 親友と恋人の比重がどうなってんのか覗いてみたい。
 思う位には、親友と思われていた頃の服部の方が素直だ。
 可愛げもそっちの方が上。

 愛されてる証拠がコレならちょっと切ねえ。
 思った事も多々あるけど。

「……よし。ちゃんと寝てたな」

 すっかり暗くなった部屋。
 カーテンを閉めに窓辺に寄ると。
 ベッドからは、静かな寝息がただ聞こえる。

 サイドテーブルにトレイを置いて、カーテンを静かに閉めた。
 ハズだったが。

「……悪い。起こしたか?」

 もぞもぞと動く気配に視線をやると。
 目を擦りながら起き上がる、服部の姿がシルエットのように見える。

「今何時?」
「7時過ぎた位だな。電気点けるぞ?」
「んー」

 扉まで戻ってスイッチを入れると。
 途端明るくなる部屋に、眩しそうに服部が目を細めて。

「……甘い匂いする……」

 言い。
 細めた目のまま、サイドテーブルに置かれた皿を見る。

「また指もすりおろしてへんやろな」
「ははは。よくんな昔の事覚えてんな」

 言いながらベッドサイドまで戻って。
 大丈夫、と両手を広げて見せてやると。
 その手を見ながら、服部が小さく息を吐いて笑った。

「そら覚えてんで。あん時は冗談にしたけど、ホンマはちょっとときめいとったし。お蔭で親友で居られんようになってもうたし」
「あ?そうなの?」
「そう」

 懐かしいな、と言いながら。
 ちょっと嬉しそうに、トレイを取るその姿を見ながら。

 リンゴをすりおろしながら、自分もその時を思い出していて。
 その時が、初めて服部を意識し出した日だった事を思い出していて。

 同じだったんだ。
 思ったら何かすげえ嬉しくなった。

「あ、待て。オレが食わしてやるから」

 スプーンでリンゴを掬って。
 口に運ぼうとするのを慌てて止めて。
 取り返して、そのままスプーンの先を服部に向けると。

「えー。ええって。自分で食えるし」
「いいから」

 やっぱり、物凄く不服そうな。
 嫌そうな声が返ったけど。

「なんでやねん。恥ずかしいやっちゃな」
「別に誰も居ねえんだからいいだろ。っつーか、病人は大人しく看病人の言う事を聞く」
「……はいはい」

 表情はあの時とはちょっと違って。
 照れてるけど嬉しそう……だと思う。

「ん、甘い」

 一口食べて、微笑む服部に。

「オレの愛は甘いだろ」

 言って。
 オレも極上の笑みを返した。



 リンゴが授けた真っ赤な愛と。
 時に酸っぱい、蜜の甘さは今も健在。

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