Forbidden fruits

 あの頃は、ホント可愛かったのに。

「おい、コラ。大人しく寝とけって、オレ言ったよな?」

 部屋を覗くと。
 ベッドには居るものの、起き上がって本を読んでいる姿が目に入る。

「せやかて、寝てばっかおっても暇やし」
「熱あんだから仕方ねーだろ」
「ええやん、動きまわっとるワケちゃうし」
「ダメだっつーの」

 本を取り上げ、ベッドに押し付けるようにして寝かせて。
 布団を掛け直してやるオレに。

「ケチ」

 言って恨めしそうに見上げる瞳が向かう。

「誰がケチだ、誰が。ったく、昔はもうちっとは可愛げがあったのに……」

 やれやれと大袈裟に息を吐いて見せると。

「可愛くなくて結構や」

 毒づいて、くるり背を向けた。
 コイツ、本気で可愛くねー。

「……んな態度してっと、飯作ってやんねーからな」

 腰に手をあて、見下ろしながらに言うが。

「別に。食べる気せえへんし要らん」

 布団でくぐもった声で返してくる。
 その声色から。
 ただ拗ねているだけなのはよく分かる。
 ついでに、引けなくなってるだけなのも。

「薬飲めねーだろが」
「食わんでも薬ぐらい飲めるし」
「ばーろ。わざわざ胃荒してどうすんだ」
「どーせバカやし。ほっとけや」

 ホント、いつまで経っても変わらねえ。
 いや。
 高校生の頃はもう少し素直だった。

 ……大学生の方が更にガキとかどうなんだ……。

 思ったら。
 またひとつ、大きなため息が思わず漏れた。

「ったく。お望み通り、放っておいてやるから。とにかく、ちゃんと大人しく寝とけ。いいな」

 告げた言葉に返事は返らない。
 けど、あとは大人しく寝てるであろう事は何となく分かる。
 振り返ろうとしない頭を。
 一つ撫でて、部屋を出た。

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