Forbidden fruits

「……ところで。いつまでオレの手握ってんだ?リンゴ掬えねえんだけど」

 言いながら、掴まれたままの手に視線を落とす。

「あ」

 言われて気付いたのか、慌てて服部がその手を放した。

「いや……オレの為にリンゴ買うて来てくれたり、指まですりおろしてくれたんやな、って思ったらこう胸がな……」
「ときめいたか」
「なんでやねん。熱くはなってもときめくか」
「病気の時に看病されると惚れる率高いっつーだろ」
「男と女やったらな」

 自由になった手で。
 バカな会話をしつつ、半分ぐらいはリンゴを食わせて。
 薬を飲ませる事にまずは成功。
 あとは薬が効いて、治ってくれれば任務完了だ。

「まあ、そないな意味ちゃうけど。少しは惚れ直したで?普段はああでも、優しいトコあるんやなって」
「普段はああって何だよ。普段から優しいだろうが」
「……あ、なんやまた熱あがったみたいや。少し寝る」
「おい、コラ」

 いそいそと布団を頭で被る服部を、覗き込んで軽く揺するが振り向こうとしない。
 まあ軽口は叩くようになったものの、治ったワケでも熱が下がってるワケでもねーから。
 元気そうに見えても、実際は凄く疲れてるのかも知れない。

「ま、いいや。しっかり寝てろ」

 言って。
 わしわしと頭をちょっとだけ乱暴に撫でてやって。
 トレイを片手に、扉に向かった。
 その背中に。

「……ありがとぉ……」

 小さく。
 声が聞こえた気がした。

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