Forbidden fruits
「そうねぇ……リンゴ食べさせてみたら?」
「あー?お粥も食えねぇっつってんのにリンゴかよ」
「バカね。当然、すりおろして食べさせるのよ」
「すりおろしたって固形は固形じゃねーか」
取り敢えず来てみた商店街。
電話で蘭に相談しながら、八百屋の店先に並ぶリンゴを手に取る。
「リンゴは身体を温めてくれるし、胃にも優しいから、お粥よりは栄養価も高いし風邪にいいと思うけど。子供の頃、お母さんが作ってくれたりしなかった?」
「……んー……そう言や、そんな事があったようなかったような……」
「やってみるだけやってみたら。いくら料理が出来なくったって、リンゴをすりおろすくらいは出来るでしょ?」
言い方がバカにしてるようで、少しカチンときたが。
こんな場所で言い争ってる場合でもないし。
「ああ、そうだな。まぁ、やってみる。さんきゅ」
言って電話を切ると。
「すみません。ここのリンゴ貰えますか?甘そうなやつで」
「あいよ」
リンゴを数個、袋に入れて貰って。
それを片手に来た道を戻る。
途中、覗いてみたリンゴは。
真っ赤な個体から、甘く柔らかい香りが響いていた。
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