Forbidden fruits
「ところで。お粥くらいは食えそうか?」
言いながら、触れた額は相当熱い。
また熱が上がってる。
「……うーん……要らんかも」
触れた手に、気持ち良さそうに瞳が細まるのを見て。
やれやれと小さく息を吐き、その手が冷えた理由のタオルを代りに額に置いた。
「要らんっつわれてもな……」
何か胃に入れなきゃ薬が飲めない。
しかし、レトルトだけどお粥も食えない。
となると。
他に何か考えなきゃならない。
「自業自得やし。ホンマ、放っといてくれてええから」
「バーカ。んなワケにいくか。気にすんなっつったろ」
「ごめんなぁ」
熱で潤んだ瞳で、素直に謝る姿を見てると。
いっそ常に弱っとけ、と思う位には今の服部には可愛げがあって。
普段とのギャップが酷いせいか、何か頭がクラクラしてきた。
「じゃ、オレちょっと出て来るから。大人しく寝とけよ。水差しはサイドテーブルに置いとくから、喉乾いたら飲め。タオルの上から氷嚢あてとくからな」
「んー……」
治ったとは言え、オレも似たような状態だったから。
少し普段と違って頭がおかしいのかも。
ふるり頭を軽く振って、立ち上がり部屋を出る。
ちょっとだけ、服部が可愛く見えた。
なんてきっと気の迷い……ってか、気のせいだ。
服部は男なんだし。
頭の中。
数々の言い訳を、自分に言い聞かせるように浮かばせながら、コートを着込んで家を出た。
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