The parallel world
「……ホンマに、工藤新一か……?」
数度のコールの後。
出た相手は服部平次。
その人に間違いは無かった。
「まさか……いや、けど……」
間違いはないものの、その声は酷く動揺していて。
戸惑っているのがありありと分かるその様子に、新一の表情は、次第に怪訝なものになる。
「なんだよ。お前が架けて来いっつーから架けてやったんだろ」
「そうやけど……まさかホンマに架けてくるとか思わへんかったし……」
怪訝な表情から、少し苛立ったような表情へ。
新一のそれが変化して。
「よく分かんねー奴だな。自分でハガキ寄越しといて、返事したらお前は誰だとか言うし。電話しろっつーからすれば、架かって来るとは思わなかったとか言うし。一体お前、何がした
んだよ」
苛立ちの分かる声色のまま、一息で一気に話すと。
「ホンマにお前が工藤新一やったら……会うてみたい」
ぽつり。
呟くぐらいの声が返った。
そしてそのまま、声は続く。
「工藤みたいな奴が、近くに居ったら楽しいやろな、って。ガキん頃からずっと思っとった。一緒に謎解きして、意見言い合うて。ぶつかっても、それはそれで楽しいのやろな、って」
「何だよそれ。お前、友達居ねーのか?」
「いんや。普通にアホなコトして笑い合うよな連れやったらなんぼでも居るけど。そない言うのとちゃうくて」
「……もっとディープな友達っつー事?」
「ははは。んー、まぁ……ちと違うけど、そんなもん」
次第に元気になる声色。
平次の話は。
自分も、似たような事を思った事があるな、と思わせるような内容で。
知ったのはつい最近。
話したのは今が初めてだと言うのに。
新一に、何となく親近感に似たものを覚えさせた。
「……じゃあ、会ってみるか?」
「え?」
「オレに、会ってみたかったんだろ?」
事件の現場で合う訳でもなく。
推理勝負が出来るかは分からないけど。
会ってみたい、と言う思いは互いに同じ。
であれば。
「ええで」
断る理由は、何処にも無かった。
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