The parallel world

「……どこが名の知れた、なんだよ」

 風呂上り。
 ずっと放っておいたハガキに目が留まり。
 何となくパソコンを開いて、検索サイトでその名を調べた。

「全然それらしい記事にヒットしねーじゃねーか」

 実は何かの悪戯か?
 思いながら、ハガキの表面の名前を眺める。

「住所も書いてあっけど……これもデタラメな可能性高いよな」

 住所は大阪。
 ここは東京。
 近いならともかく、わざわざ大阪までこの住所を尋ねる義理は無い。

「何の意図か知らねーが……この住所が本物で、服部平次って奴が実在するなら。こっちからハガキを送っても、ちゃんと届く筈だよな」

 普段ならば、全くの他人に興味を示す事はないのだが。
 どう言う訳か、この服部平次と言う男が気になって仕方がない。
 会った事も無い。
 そもそも、本当に存在しているのかも怪しい、その人物が。

「……ハガキ、あったかな……」

 呟くと。
 パソコンを閉じて、書斎のある方へと歩き出した。
 何故自分は、こんな馬鹿らしい事をしているんだ、と。
 内心自分に毒づきながら。

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