Lunatic Hour

「……ホンマになんなんやろな、コレ」

 家に戻って。
 コーヒーを飲みながら、一息ついていると。
 いつの間にジャケットから取り出したのか。
 服部が、例の小瓶をしげしげと眺めていた。

「おま……いつの間にっ」

 取り返そうと、腕を伸ばした。
 その手が届くより早く。

 ぽん。

 服部が栓を引き抜いた、その音が耳に届いた。

「バカっ!何開けて……っ」

 小さな。
 蛍のような光が。
 ゆらゆらと揺れながら瓶から昇り。

「?」

 不思議そうに眺める、服部の目の高さと同じになったその場所で。

「眩し……っ」

 一層光を強くし、服部が瞳を閉じた。
 次の瞬間。
 弾けるように飛び散った光は、服部目掛けて飛んで。

 そして消えた。

「……」

 ぽかん、と。
 手を伸ばした格好のまま、その様子を眺めていたオレを。
 ゆっくりと瞼を上げた服部が見る。

 数度の瞬き。

「……なんやったんや……」

 少し呆けてはいるが。
 その様子に、普段と変わった所は無い。

「……何ともねーか?」
「別に……コレと言ってなんも」
「そうか。だったらいい」

 どうやら今回は失敗か、元々驚かそうとしただけだったのか。
 何事もなさそうだ、と安堵の息を吐く。

「……もう一杯コーヒー淹れて来ぉ……」

 ぽりぽりと頬を掻きながら。
 頭に『?』を大量に浮かべてるような表情で。
 服部は立ち上がり、キッチンへと向かっていった。





 その後も。
 得に何が起きるでもなく。
 服部の様子も普通のまま、週末の時間は過ぎ。
 大阪に帰るのを見送って、家に戻った。

 事件は、その時に起きた。

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