輝ける星
「雨降ってるゆうのに。こないなトコでなにしとるんや、平次」
新一が消えた視界に現れたのは平蔵。
門が開く、その気配に気づいてすぐに新一を避けたので、平蔵には運良く何も見られていない。
だが、構える暇も無く押された新一は。
その瞬間、首が思い切りゴキ、と音を立てていた。
ような気がした。
「お、おおおかえり、おとん。今日早いんやなっ」
引き攣った笑顔を向けながらに言って、横に視線を向けると。
首を抑えて、前のめりに倒れるのを踏ん張って耐える新一の姿が見える。
「ああ、たまにはな……て、そこに居るのは工藤君やないか……おもろいカッコしてどないしたんや」
「あー……雨ですべってコケたんや。な?だ、大丈夫か?工藤。……ほんまにスマン……」
新一の両肩を掴んで支えてやりながら、覗き込んで小声で囁くように謝るが。
立ち直した新一の頭が、押さえている首を中心に少し傾いているのは、恐らく平次の目の錯覚ではない。
「ははは……お久しぶりです、平蔵さん。お邪魔してました、こんばんは。まあ、もう帰る所なんですけどね」
同じく、引き攣った笑顔を向けて平蔵に挨拶をして。
平次を振り返った、その瞳は怖い。
「ほ、ほならオレ工藤駅まで送ってくさかい。おかんにもゆうといてやっ」
言って、新一の首を押さえるのとは逆の手首を掴み。
そそくさと門を抜けようとする平次に。
「コラ、平次。傘持たんでどないする。ほれ、コレ持ってけ」
にこやかな平蔵が、今まで自分がさしていた傘を差し出す。
それを受け取って。
「お、おう。ほな行ってくるわ」
「平蔵さん、また……」
軽く頭を下げて出て行く二人。
その背中に。
「気ぃつけてな」
平蔵の気のいい声が掛かるが。
背を向けている二人の表情は、この雨空のようにどんより暗かった。
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