輝ける星
「……ホンマかなんなぁ……」
強く組まれていた腕を解き、俯きながらぽつり平次が呟いて。
次に上げた顔が、少し照れ臭そうな。
嬉しそうな。
実にいい表情だったものだから。
新一の胸を、これまで感じた中でも一番。
苦しい程にドキリとさせた。
「やっぱ好きや。他の誰も勝たれへん。いっつも、工藤が一番なんや。工藤やないと、オレあかんねん」
雨音の中、やはり呟くように小さなその声は。
極近く、正面に立つ新一でさえも、下手をすれば聞き取れない程の音。
「これからは。オレの……オレだけの工藤で居ってくれる?」
けれど、どんなに小さくても。
新一には、はっきりと聞こえる。
「言ったろ。今日は願いが叶う日だ」
差し出された手を、取るなり思い切り引いて。
ぎゅっと抱き締めた平次の体は、新一と同じくしっとりと濡れている。
頬に当たる髪も冷たい。
「お前だけのオレで居てやるよ。だから」
濡れた髪を指で梳くように撫でて。
近付く瞳が、門の明かりでゆらゆらと揺らめく。
「お前も、これからはオレだけのお前で居ろ」
添えられた片手。
少し上向く顎に、唇がうっすらと開いて。
新一の唇が、そこに届こうとした。
もう一寸、と言うところで。
ばっ、と。
平次が新一の頭を、片手で横に思い切りずらした。
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