輝ける星
彼が江戸川コナンである事は、自分にとって非常に都合が良かったのだと。
コナンが消え、新一が戻って来たあの日。
平次は嫌と言う程に自覚した。
「……有り得へん……」
痛い程脈打つ胸の、代わりにシャツをぎゅっと強く掴んで。
鏡を見れば、これが本当に自分かと疑いたくなる、そんな表情の自分がそこに居る。
「この感覚は知っとる……。ウソや。なんで今更……」
新一に出会うのは初めてじゃない。
コナンだった頃にも、何度も薬で戻った彼に会っている。
けれど、こんな感覚を覚えた事は無かった。
……無かった……?
「いや……今更ちゃうな……。いっちゃんはじめ……。そうや、あん時も」
初めて会った日。
調子に乗っていた自分を、目覚めさせたあの時、既に。
「はは……アホやオレ。惚れるにしても、種類まちごうてる」
気付いてしまった想いに、自分でももう笑うしかなかった。
今まで何度か新一の姿で会っても、こんな風にならなかったのは。
彼がその姿のままでは、長く留まれないと分かっていたからだ。
コナンである彼と一緒に居ても、この感情に気付かなかったのも。
相手が小学生で、なにがどうなる存在でもなかったから。
「全然対等なんて思ってへんやん。対等に扱ってくれる、て。あいつの信頼、ずっと裏切っとったんや。サイテーやな」
コナンの姿なら、正体を知っている自分は優位な立場で。
したい時には、彼を独占する事だって出来ていた。
独占欲を満たすのに、江戸川コナンである彼は本当に都合が良かった。
それが好きだから、大事だからと言う理由から来ているとしても。
とても平次には自分を許せる気になれない。
だから。
「蘭と、ちゃんと付き合う事にした」
そう言われた時には、本気で良かったと思った。
今度こそ本当に、友達として隣に立っていけると喜んだ。
それなのに。
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