輝ける星
帰り道。
街中で行われていたイベントで渡された短冊。
ふと、歩みを止めて周りを見渡す。
「ああ、今日は七夕か」
親子やカップル。
様々な人達が、実に楽し気に。
短冊に各々の願いを書き込んでいた。
「……こないなモンに願い書き込んで、ホンマに叶うんやったら……そらなんぼでも書いたるけど」
真っ新な短冊に視線を落とし、長い溜息を吐く。
短冊は彼の瞳と同じ、深い蒼色。
「そない魔法みたいな事、現実に起きる訳あれへんし。あー……難儀やで」
もう一つ。
大袈裟過ぎる程の溜息を吐くと。
短冊をズボンのポケットに仕舞いつつ、逆の手で後ろ頭を掻いて。
平次は家へ向かい、また重い足取りで歩き始めた。
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