I can still fall in love with you from my heart

 オレのドコが好きかを、服部に訊いても。
 やっぱ答えは返らないのだろう。



「工藤。コレとコレやったら、どっちがええ?」

 両手にそれぞれ、全く違うキーホルダー。
 片方は大人っぽくて、もう片方は少し子供っぽい。

「コッチ」

 当然、大人っぽい方を指すと。
 じ、と暫しそれを眺めて。

「ほなコレにしよ」

 に、と笑って選んだ方を握り締め。
 選ばれなかった方を棚に戻した。

「今日は買うのか」
「ん。工藤の分も買うたるわ」

 戻した手で、もう一つ同じモノの色違いを取り。
 そのままレジへと機嫌よく向かう。

「何に使う気だ?キーホルダーなんて、結構持ってそうだけど」

 バイクのキーは、バイクに傷がつくからとキーホルダーは付けないし。
 携帯に付けるには大きすぎる。
 レジ前に立つ服部の背中を眺めて。
 そんな事を考えながら、昨日のアイツを思い出していた。

「しっかし。オレどこまで自惚れたらいいんだろ」

 言う通り選ぶ気もないのに、好みを聞いたり。
 言う事を聞く気もないのに、何かにつけ意見を求めてくるのは。
 それだけ、服部がオレを好きでいてくれていると言う事で。
 より知ろうと、近付こうとしてくれてると言う事。

 染まろうとするんじゃなくて、ずっと隣に並んでいようとしてくれている。

「お待っとさん。したら飯行こか」

 戻って来た手に、大事そうに収まっている紙袋。
 表情は頗る上機嫌。
 
「何食いたい?」
「寿司!回ってへんヤツな」

 奢ると聞いていて、遠慮のないこの選択。
 寧ろ、奢ると聞いていたからこその選択かも知れないが。

「へーへー……」

 わざとらしく、やれやれと息を吐いてみるものの。
 笑顔で居てくれるなら、寿司くらい安いモンだと内心思う。
 二人で過ごす時間は、何にも代えられないものだから。

 より多くの笑顔で満たされるなら、それが最高。




 食後に入ったコーヒーショップ。
 先程買ったキーホルダーに通された、服部のマンションと、オレの家の鍵。

 服部の気持ちも、何が何でも絶対なんだと。
 お揃いのソレが、そっとオレに教えてくれた。

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