すたあの恋

 変わって工藤新一のその後はと言えば。

 溜まりに溜まったスケジュールに追われ、殆ど休む暇もない日々を送っていた。
 この日はマジック番組のゲストとして呼ばれ、今は休憩中。
 隣にはその番組の主役、黒羽快斗が居た。

「お前、平次のトコに居たらしいな。聞いてビックリしたっつーの。何で連絡しなかったんだよ」

 少し拗ねたような口調で快斗が新一に尋ねた。

「言ったらお前、マネージャーに告げ口するかも知れねーじゃん」
「うわ、ひでっ。んな友達売るようなマネするヤツだと思われてんの?!オレ。わー、ショック」

 大袈裟にショックを受けたふりをして見せて。
 快斗が小さく吹き出した。

「…なんだよ?」

 脈絡もないその行動に、新一が首を傾げると、快斗は笑ったままのその顔を向けて。

「平次と居て、そんな楽しかった?『会いたいな』って、顔に書いてあるぜ?新一くん」

 言われ、新一が目を丸くする。

 そんな顔をしていたのか?自分は。
 ずっと忙しくて、平次の事を思い出す暇すらなかった。
 お陰で下手に苦しまずには済んでいたのだが、今、その名前を聞いて。
 確かに一瞬にして彼の事を思い出してしまった自分が居た。
 またあの笑顔が見たいな、と思ったのも事実。
 だからって、それがそのまま顔に出てしまっただなんて。
 有り得ない。

 ショックを受けている新一の耳元に、快斗が顔を寄せて小さく呟く。

「会わせてやろっか」
「…え?」

 驚いた表情で振り返る新一を、快斗は口元に笑みを浮かべて見て。

「実は居るんだよね、オレの楽屋に。臨時付き人として、平次が」

 快斗が言い終わるのが早いか、新一が動いたのが早いか。
 新一の姿は、一瞬にして快斗の前から消えていた。

「休憩明けまでには戻れよー」

 急いでスタジオを出ようとしている背中に、苦笑しながら声を送る。

「…こんな新一の姿を見れる日がこようとはな。恐るべし、オレのダチ」

 スタッフの用意したコーヒーを受け取って、口元に運びながら快斗は笑った。



 新一もまた、平次に恋をしている。
 平次とは逆で、その心は明るく輝いていたけれど。

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