I can still fall in love with you from my heart

 服部の、ドコが嫌いかと訊かれれば。
 いっぱいありそうな気もするけど、やっぱ結局は答えられない。



「……なんか、すっげー疲れた……」
「えー?座って、甘いモンも食ったのに?」

 家に着くなり、ソファでぐったりとしているオレを。
 腰に片手を当てて、見下ろしながら呆れた声を出す。

 普段は周りの目を気にするくせに、堂々とカップルシートに男二人で並んで。
 元々の、距離感の無さを存分に発揮した顔の近さで、ずっと話して。
 ミックスベリーなんて、夢見がちなタルトを食べて。
 その他にも、色々あったんだけど……。

 今日の服部は。
 服部らしい服部と、そうじゃない服部が混在していて。
 普段からよく分からないヤツではあるけど、いつにも増してよく分からない服部だった。

「しゃーないな。マッサージしたるわ」

 こんな事、あんまり言うヤツじゃない。
 やっぱ今日はなんか違うみたいだ。

「ほれ、横んなって」

 言いながら、肩を押してソファに寝かせようとする。
 その手を取って引くと。
 上に倒れ込みそうになったのを、ソファの背に片手を掛けて、何とか堪えていた。

「……っぶないやろ!何す……っ」

 片手を伸ばし、後頭部に回して。
 引き寄せた唇に、自分のそれを重ねて言葉を封じる。
 すぐに離れようとするのを許さずに。
 唇を割って、舌を絡めて。

 大人しくなって。
 応えていたのが、求めるモノに変化するまで。
 じっくりと味わったそこは、さっきのミックスベリーの味。

 ……が、したような気がした。

「疲れとったんちゃうんかい」

 唇を開放しても、離れる気配は全く無くて。
 いつもとは逆のポジションから見る、あまり見慣れない景色は。
 服部までもが違うように見えそうで。

「癒してくれるんだろ?」
「マッサージしたる、とはゆうたけど……」

 言いながら目を細める、そんな仕草も。
 普段上から見てるのと違ってて。
 ああ、コイツ男なんだよな……なんて。
 当たり前の事を思わせた。

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