Special day

 服部が部屋に入るのと、その服部を壁に叩き付ける様にして押さえ付けたのは、ほぼ同時くらいだったと思う。
 元々大きな瞳が、更に大きく見開かれて。
 その瞳には、間近から見据える自分が映る。

「ムードも何も、別に要らねーよな。今日がオレの誕生日だろうが、何だろうが。お前には関係ないんだろ?」

 服部が何か答えるより先に唇を塞いで。
 続けて耳、首筋と。
 弱い所へ次々と唇を這わす。

「……ま、待……って!オレの話も……聞けやっ」

 するするとシャツに滑り込ませた手を、脇腹から胸までを撫でる様に滑らせると。
 ビクリ、肩を震わせて。
 しがみ付く様な形で、服部が身を縮ませた。

「聞いてやるから話せよ」
「こ、こないな状態で……話せるか……っ」

 唇も手も。
 動きを止める気の無いオレに、強い瞳と声が向けられるが。
 その瞳は、強さの裏に、少しだけ悲しさが隠れているようだった。
 尤も、オレにはそれが悔しさにしか見えなかった訳だが。

「じゃ、黙ってろ」

 一瞬だけ動きを止めて、真正面から見据えた瞳に告げると。
 その色に諦めが浮かんで。
 そのまま、服部の身体から抵抗が消えた。

「もうええ。好きにせぇや」

 言って閉じられた瞳は、どんな表情なのか窺い知れない。
 もう一度重ねた唇も、何も語ってはこない。

「……やめた」

 半ば突き放すようにして離れて。
 そのまま背を向け、近くのソファに腰を下ろす。
 背後で、服部がその場に沈む様に座り込む音が聞こえた。

[ 186/289 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -