Special day

恋人と過ごす初めての誕生日っつったら。
 普段はクールに決めた奴でも、ちょっとぐらいはロマンチストになるってもので。
 この日だけは特別で、思い出に残るいい一日にしたい。
 そんな風に思うモンだと思ってた。

「今、なんつった?」

 待ち合わせ場所。
 到着した服部から出た言葉に、思わず自分の耳を疑った。 

「3時の新幹線に乗らなアカンから、あちこち行ってる余裕無い、て」

 現在時刻、朝の9時。
 言ってる時間まで6時間。
 カラオケのフリータイムか、コラ。

「……オレの為に、今日は予定空けとくって言ってなかったか?お前」
「空けといたやろー?せやから今ここに居んねん」

 恋人の為に空けておくのは、最低でも夜だと思っていた自分の感覚がズレているのか。
 待ち合わせは朝だから、まるまる1日一緒に居られると思っていた。
 そんなオレがご都合主義のバカなのか。

 顔には出さないが、相当なショックを受けている事に、きっと服部は気付いていない。

「取り敢えず、プレゼントなんやけど……」
「要らねぇ」

 歩き出そうとする服部に、その場を動かないままで答える。
 振り返った瞳が、『なんで?』と訊いてきている。
 けれど、それには答えない。

 一歩近付いて手首を掴み、服部が向かおうとした方とは真逆に、引っ張るようにして歩き出した。

「え、ちょぉ……どこに……」
「オレん家。時間ねーんだろ」

 駅を出て、即行でタクシーに乗り込んで。
 行き先を告げた後はずっと無言。
 単純にオレが怒っているとだけ思った服部は、気まずそうに何度かこちらをチラチラと見て。

「……なんで怒ってんねん……」

 そんな事をぽつりぽつりと呟いていた。

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