XOXO

「まぁ、アレだ。あの日のお前はどんだけ高かったんだ、って話だよな、コレ」

 帰りの新幹線の切符を買って、財布に溜まったレシートの厚さを眺め。
 工藤がやれやれと息を吐く。

「今日かかされた恥の分も上乗せやアホ!あー……明日からどないな顔して生きてけゆうんじゃ、ボケ。はー……」
「超幸せです!って顔して生きてけばいいだろ」
「嫌や。無理や。ホンマ最悪や。要らんお返しまで付けよって……」
「はいはいはい」

 ぽんぽん、と服部の頭を撫でて。

「で、楽しかったか?」

 細めた瞳で工藤が訊く。
 瞳は合わせているものの、服部は頷くでも答えるでもない。
 その様子に、少しだけ笑って。

「今度はオレが、とっておきのコースを考えといてやるよ。……じゃ、行くな」

 もう一度、くしゃり髪を撫で。
 くるり背を向けると、ひらり片手を舞わして改札を抜けようとする。
 その背中に。

「工藤」

 呼び掛けて。
 振り向いた瞳に。

「……。……気ぃつけてな」

 何か言い掛けようとして飲み込んで。
 笑みを向けると、瞳が笑う。
 また背を向けて歩き出し、その姿が人ごみに消えた。

「高校最後の大阪。楽しい思い出ありがとうな、工藤」

 呟いて、改札に背を向け歩き出す。
 服部の姿も、すぐに人ごみの中に消えた。



 大学の合格と、引っ越し報告の為。
 工藤邸に服部が訪れたのは、それから2週間後。
 二人の物語は、そこからまた、新しい章が始まってゆく。

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