XOXO

結局、何も決められないまま。
約束の日、工藤は大阪駅に居た。
無論、プレゼントは持っていない。

「工藤」

名前を呼ばれて振り返ると、笑顔を向けて走り寄って来る服部の姿。
着替えて来たらしく、制服では無く私服で。
その姿は、やはり高級レストランなんて選択肢は無かったと思われた。

「取り敢えず、オレも普通の服にしといてセーフ……」

自分だけドレスアップしていても、釣り合わな過ぎて変に目立つ所だ。
ただの高校生男子二人。
どこにでも居る光景。

「待たせたか?」

目の前まで来て立ち止まり、肩で息をしながら言う姿は。
両膝に手を付いて、上目に見られているせいか。
少しだけ色っぽい。

なんて事は。
言葉にすれば、たちどころに殴られるか蹴られるのが目に見えている。

「全然」

とだけ答えた。



「したら、まずどこ行こか?それと、飯は何がええ?」
「何でもいいよ。お前が食いたいモノで。今回は、お前が主役だからな」

言ったら、に、と笑った顔がまた可愛くて。
本当に、すぐにでも抱き締めたいくらいなのだが。
ここは駅の改札。
そう言うワケにもいかない。

「めんどくせぇ世の中だよな、ホント」
「何がや」

声になるかならないかの呟きだったのだが、それすら拾う地獄耳。

「何でもねーよ」

告げて笑みを向けたら、思い切り不審気な視線が返って。
何と無く、苦笑いが漏れる。

「どーせまた下らん事考えとったのやろ……」

そのままの瞳で言われて。
反論しない工藤に、服部がやれやれと小さな息を吐いた。

「まぁええわ。ウインドーショッピングしたら、その後で串カツ食いに行こ」

もう一度瞳が合う頃には、普段と変わらぬそれが工藤を捉えて。
何気に掴まれた手首が引かれる。
掴むのが、手では無いのが少し悲しい。
なんて事は思わない。

「お好み焼きじゃねえんだ?」
「お好みは明日な、明日」

楽し気に歩く服部の少し後ろを、引かれるまま、柔らかい笑顔の工藤が後に続いた。

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