Addicted To You

あいつが別に根っからのゲイじゃない事は十分分かってる。
それはオレだって同じだ。
だけど、一番は自分だって思ってきた。
 オレがあいつじゃなきゃダメなように。
あいつは、オレじゃなきゃダメなんだって。

なのに……。





内緒で行った大阪。
視界に入った姿。
遠くからでも分かる。
見間違える訳が無い。

「服部……」

隣には知らない女。
同級生?
 しかも、ちょっと可愛い。

遠山さん以外の女と言うのがまず意外。
そして、その子と話す照れ顔がまた意外。
あんな顔、オレにだってした事ねえ。

「……デート……?」

手を繋いで歩いてる訳じゃない。
まして、腕を組んでいる訳でもない。
ただ、距離がかなり近い。
……まぁ、あいつは元から距離感がおかしいヤツだけど。
それにしたって……。

「あ」

言ったのが分かるくらい開かれた口。

「工藤」

唇が名前を呼んで。
隣の女もつられる様に、服部の視線の先に居るオレを見た。
その隣の女を置き去りで、服部がこちらに駆け寄って来る。

「なんで居るんや?来るなんて一言も……」
「おい。彼女置き去りでいいのかよ」
「え。あ……」

少し離れた場所で、立ち止まったままの女に視線を向ける。
服部も、思い出したようにそちらを向いた。

「すまん。ちょおそこで待っといて」

服部が言うと、女は頷いて歩道脇のベンチに腰掛ける。
それを見届けて、戻された視線がオレと合う。

「で、ホンマになんで居るんや。来るならゆうといてくれな。知らんかったからオレ……」
「ああ悪い。デートの邪魔しちまったみてーだよな。安心しろよ、すぐ消えっから」
「え?」

言って肩をポンと叩くと、服部の脇をそのまますり抜けて。
ベンチに座る女の前で立ち止まった。

「邪魔をしてしまったようでごめんなさい。もうボクは行きますので」

笑みを作って向けると、少し照れたように頬を染める。
意外と軽い女だな。
思いながら、顔には出さずに背を向けた。

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