Nightmare
「平次。あんたホンマに彼女とか居れへんの?」
「またかいな……。居れへん、ゆうてるやないか」
読み掛けの雑誌を置いて、軽く溜息交じりに答える。
もはや何度目か分からない質問は、いい加減答えるのも面倒と言うもの。
訊いてくる親心も分からなくもなかったが、やはり面倒な気持ちの方が上回る。
「18にもなって……なっさけない」
「ほっとけ」
彼女は居ないが、恋人なら居る。
工藤新一と言う名の、同い年の恋人が。
相当愛されている自信もある。
けれど、言えない。
その後もぶつぶつ言いながら、部屋を出て行く静華の背中を見送り。
また一人になって、小さく息を吐く。
「……何で隠さなアカンのやろ……」
言ってしまえれば楽なのに。
今まで何度も思った。
思ってはいたが……――。
こんな事を望んでいた訳ではない。
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