「辰巳様。あなたの過ちは、『外』の物差しで俺達を量ろうとしたことです。外から見た姿がどれだけ異様なものだろうが、俺達は今までずっと、このやり方を通してきたんです。今更改めろと言われて、簡単に変えられるものじゃない」

 葛西や大東、北見の熱のこもった瞳とは違う、穏やかな目で南は俺を見つめる。

「あなたがこの学園の現状を憂い、改革を図ろうとしたことは分かります。ですが、その変容は、俺達にとっては劇薬に過ぎた。人は、元来変化を好まない動物だ。この学園の秩序を粛々と受け入れ続けてきた生徒達にとっては、あなたはただの破壊者にしか見えなかったんですよ」
「俺、は…」

 俺がやろうとしてきたことは、間違いだったのか?
 学園のためを思ってやってきたことは、独りよがりの、生徒達にとっては迷惑なものにすぎなかったのか…?

「改革を断行しようとしたあなたの姿勢はご立派でしたよ、辰巳様。ですが、誰にも望まれない変化を引き起こすためには、強力なリーダーシップと、強固な意志、確実な実行力が必要になる。それらの資質が、あなたには欠けていたようだ……残念です」

 南の心にあるのは、失望、なのだろうか。
 一番に信頼していた人間から見限られる絶望に、目の前が暗くなるような苦しさを感じた。

「辰巳様…我々の献身の対価を…今、返してもらいます」

 一歩踏み出す彼等から、逃げ出そうと駆けだすが、横から伸びてきた腕に捕らえられる。

「うあっ!」
「辰巳様…!! ああ、やっとあなたに触れられる…」

 感極まった声と共に、大東にきつく抱き締められる。

「…放せ、大東」

 たくましい腕の中に閉じ込められ、もがくことすらままならない。

「夢のようです、辰巳様…ああ、あなたがこの腕の中にいるなんて…!」
「抱き締めただけで悦に入ってんじゃねーよ、でくのぼう。これから、もっとイイことしようってのに」

「…やめろ…」

 もう何度言ったかもしれない台詞。
 どうせ奴等には届かないと分かっていても、それでも言わずにいはいられない。
 どうか、思いを翻してくれないかと、淡い希望にすがらずにおれないのだ。

「俺が最初に捕まえたんだからよ、俺からってのが筋だろ」
「仕方がないな…大東」
「…分かった」

 渋々大東が腕を解き、俺の身体を葛西へと譲り渡す。

「辰巳サマは初めてなんだっけ? じゃあせいぜい、優しくしてやんねーとな」

 机に上半身を押し付けられ、強引に着衣を脱がされてゆく。

「つっ!」

 上半身を愛撫されている間は葛西を無視していられたが、下半身に手を伸ばされ、否が応でも現実に引き戻される。

「やめろ…痛い…!!」
「指二本しか入れてねえのに、狭っめえの」

 ぐりぐりと身体の中をまさぐられ、苦痛に俺は呻いた。

「あ、ああ…いやだ、止めてくれ…! ああ…っ!!」
「ハハ、かっわいー声。このまま突っ込んだら、裂けちまうかな?」

 酷薄な声に、俺はびくりと身体を震わせる。

「止めろ、葛西。辰巳様を傷付けるのは本意じゃない」
「つっても、俺等全員相手にしてりゃ、遅かれ早かれボロボロになんだろ。結果は変わんねえよ」

 がり…と首筋に噛みつかれ、解された場所に熱いものが宛がわれる。

「いやだ、やめろ…! 頼むから…っ」

 必至の懇願も、楽しげな葛西には届かない。

「あ…」

 俺の身体を、鋭い楔が貫いた。


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