「よう、辰巳さん。元気そうじゃねーか」

 かつては俺のものだった生徒会長の椅子に悠然と背を預け、北斗は秀麗な美貌を笑ませて俺を迎えた。
 こうやって顔を合わせるのは、あの日以来だ。

「三日もしないうちに尻尾を巻いて逃げだすかと思ってたが、案外粘るなあ」
「…あんなことくらいで挫けてなるか。俺は、負けない。お前の思い通りになんてなるものか!」
「負けない、ねえ。あんたみたいな潔癖症には、暴力や嫌がらせよりこっちの方が効くと思ったんだがな。親衛隊のご奉仕に身体が順応しちまったか? 見た目に反して、随分と淫乱だったわけだ」
「ふ、ふざけるな! 誰が、そんな…!!」
「どうなんだ?大東、北見。お前ら、愛しの辰巳様を満足させられてるのか?」

 憤る俺を無視し、北斗は大東と北見に顔を向ける。

「当たり前です、北斗様。辰巳様は僕の身体で、何度も何度も達して下さるんです。それはもう、心地よさそうに」
「ええ、もちろん。この頃は、後ろの刺激だけでも絶頂に達して下さるようになりました。俺の腕の中で美しく、淫らに乱れてくださいます」

「な…っ! 止めろ!!止めてくれ!!」

 明け透けな二人の言葉に、俺の頬が熱くなる。

「はは、やっぱり淫乱だな、辰巳さん。お堅そうなふりして、随分と好きものだったわけだ」
「違う、俺は…!」

 必死に否定しようとする俺に、ひたりと北斗が目を据える。

「なあ、あんたの淫乱な姿、俺にも見せてくれよ」

 向けられる酷薄な眼差しに、俺の背筋が凍りつく。
 最初に俺を『狩った』時と同じ、残酷な支配者の顔。

「大東、北見。二人で辰巳様に奉仕してやれ」
「二人で、ですか?」
「そ。後ろに入れたまま、突っ込ませてやれ。さぞかし気持ちイイ思いをさせてやれるだろうよ」

 下された命令に、顔から血の気が引いてゆく。
 これ以上、俺の矜持を踏み躙る方法があるなんて。

「このウスノロも一緒って言うのが気に入りませんが、ご命令とあれば、謹んで」
「誰がウスノロだ、かしがましく囀るしか能のない子猿が。俺の協力がなければ、お前一人で何ができる」
「おいおい、仲良くしろよ。お前らがうまいこと協力しねえと、辰巳様を愉しませてやれねえだろ?」

 北斗の言葉に二人は睨み合いを止め、俺の身体へと手を伸ばしてくる。

「辰巳様、こちらへ…」
「いやだぁっ!! いやだ、やだ、止めてくれぇっ!!」

 想像することすらおぞましい行為。
 俺は大東の手を振り払って逃れようとするが、すぐさま逞しい身体に捕らえられてしまう。

「辰巳様、暴れないでください。あなたに怪我をさせたくはないんです」
「いやだ、止めてくれ!! 頼む、頼むからっ!! だ、大東…北見も…」
「はは、どうしたんだよ辰巳さん、急に取り乱して。いつもやってることだろ? やり方が少し変わったくらいで、そんなに慌てんな。あんたはこんなことくらいじゃ負けねえんだろ? だったら受け入れて見せろよ。どんな屈辱だろうと飲み下して、消化して見せろ」
「そんな…っ…!」

 無理だ、無理だ無理だ!!
 こんな、畜生にも劣るおぞましい行為が、受け入れられるはずがない!

「辰巳様、落ち付いて。大丈夫です、僕がいつもみたいに気持ち良くして差し上げますから。だから、泣かないで」

 いつの間にか濡れていた頬を撫でられ、舌を這わされる。
 零れ落ちる涙を舐めとりながら、北見は器用に俺の服をはだけさせ、隙間から肌を撫でてくる。
 後ろ手に俺を拘束する大東を、どうやっても振り解くことができない。

 …逃れ、られない。
 人としての尊厳を貶められる恐怖に、俺の歯がガチガチと音を立てる。

「いやだ…!」




「北斗、いんのか? 入るぞ」

 まさに辱められようとしていた俺を救ったのは、ノックと共にかけられたその声だった。

「編成しなおした委員のリスト、持って来たぜ。確認してくれ」

 背の高い、大東にも負けない逞しい体格の生徒が生徒会室に入ってくる。

「乾…」

 風紀委員の長、乾だ。

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