「ああああ!!」
悲鳴を上げる俺にも構わず、葛西が強引に身体を押し進めてくる。
「まだ先っぽしか入ってねーぜ、辰巳サマ」
「いた…痛い!! うあああっ」
「いーい反応だなぁ?」
「あ、あ…」
身の内が、灼熱に焼かれる。
痛い、苦しい、熱い。痛い…
「かわいいぜ、辰巳サマ。ずっとあんたにこうしてやりたかった」
「うう…」
長いような、短い時間が過ぎて、葛西は俺の中に欲望の証を解き放った。
葛西から解放され、くずおれた俺の身体を、大東の腕が抱きとめる。
自分のブレザーを脱ぎ床に敷くと、その上に俺を横たえた。
「お慕いしています、辰巳様。ずっとあなたが好きでした…」
熱っぽく愛を囁き、大東が自身を押し込めてくる。
「ふ、あ、あっ!」
「愛しています、辰巳様…! ああ、辰巳様…」
「いや…苦し…!」
愛していると口先では何度も繰り返しているが、大東は俺の反応を気にもせずに、自分の快感だけを追い求め続けている。
快楽を得るためだけの道具に貶められた屈辱に、俺は目が眩みそうなほどの怒りを感じた。
何が、愛だ。自分の欲望だけが大事な癖に。
葛西のように、身体だけが目当てだと言われた方が、自分に正直なだけよほど好ましい。
揺さぶられ翻弄される中、俺の意識だけは妙に冴え、憎悪の感情が静かに蓄積していった。
「く、う、う…いやだ、ああ…っ!」
「辰巳様…!」
感極まったように目を潤ませ、大東が俺の中で達する。
「はぁ、はぁ…あ…」
「辰巳様…」
行為を終えた後も俺から身を放さずに、抱き締めていた大東を、細い手が小突く。
「終わったんなら、さっさと離れてよ、ウスノロ。辰巳様は、あんただけのものじゃないんだから」
「ふん…お前のものでもないだろう」
「…そうだよ。辰巳様は皆のモノ。だから、次は僕の番。分かったならさっさと離れて」
「ちっ」
場を譲る大東に代わり、北見が俺の傍らに跪く。
「…北見…お前も、なのか…?」
「大丈夫です、辰巳様。僕は彼等と違って、あなたを苦しめるつもりはないですから」
優しげに微笑むと、剥き出しになった俺自身に、唇で触れてきた。
「北見…っ、ああ…!」
女のような顔の北見に咥えられ、巧みな技で愛撫されて、俺はこんな時だというのに、反応してしまう。
「うれしい…やっと、辰巳様と繋がれる」
夢見るような顔で囁き、服を脱いだ北見は、俺の上へと腰を下ろした。
「あ、っ!」
「んううっ…! はぁ、辰巳様…ぁ」
熱く狭い肉体に包まれ、否応なく高みへと追いやられる。
「くっ…!」
短く呻き、俺は北見の中で果ててしまった。
「はは、早過ぎじゃね、辰巳様。実は欲求不満だった? 次はもっとちゃんと、イカせてやるからな」
「俺が誠意を込めてご奉仕して差し上げた結果だろう」
「うるさいな…外野は黙っててよ」
横やりを入れる二人を睨んでから、北見は俺の胸に頭をもたれかけた。
「辰巳様…とても、素敵でした。僕は今、すごく幸せです…」
葛西や大東とは違う方法ではあるが、結局は北見も俺の意志などどうでもよく、身体さえあればいいのだ。
俺という人間の、価値は一体どこにあったのだろう。
今まで積み上げてきた努力や、築いてきたと思った信頼などは、彼等にとっては何の値打ちもなかった。
俺という人間の、否定。
それは、肉体的な苦痛よりもよほど深く、俺の心を抉った。