「う、ん…」

 目覚めた俺の目に映ったのは、見覚えのある光景だった。
 薄いグリーンを基調にした壁紙に、馴染のある柔らかな寝台。
 どこぞのホテルかと勘違いしそうなこの洒落た部屋は、桂月の寝室だ。

「あれ…いつの間に…」

 身を起こそうと、何気なく自分の身体を見た俺は、信じられない光景に目を見張った。
 両手首はファーのついた、SM用と思わしき手錠で戒められ、なぜか前を全開にしたシャツ一枚を残し、裸に剥かれていたのだ。

「な、何だこれ!!」

 思わず漏れた疑問に、部屋の隅から返事が返る。

「あ、目が覚めたんだ。護身用の睡眠薬使ったんだけど、頭痛くなったりしてない?」

 そこには、部屋の一角に置かれたテーブルセットに優雅に腰掛け、ティーカップを傾ける桂月の姿。

「桂月?! 何だよこれ!!」
「手錠だよ。中はちゃんと布張りになってるから、痛くないよ」
「そうじゃなくて! 何で俺は裸に剥かれた上に、こんなものつけられてるんだ?!」
「決まってるじゃない。周君に、お仕置きをするんだよ」

 テーブルにティーカップを置き、にっこり笑った。
 パチンと細い指を鳴らすと、それまで部屋の隅に控えていたらしい二人の男が、桂月の脇にスッと控えた。
 俺には劣るもののそこそこ見目のいい、背の高い二人の男には、大いに見覚えがある。

「お前ら、嘉月の親衛隊か?」

 確か、隊長の瀬崎希(せざきのぞみ)と、副隊長の橋立元(はしだてはじめ)だ。

「表向きはそうなってるけど、ほんとは違うんだよ。この二人はね、僕の家がつけてくれた、護衛兼お目付け役。
 だから、僕が望むことなら何だってするんだ。どぉんな無茶な命令でもね」
「無茶…って…」
「二度と浮気したくなくなるよう、徹底的に調教してあげる」

 内心怒り狂っているだろうに、桂月は綺麗な笑みを浮かべている。
 その奥に秘められているだろう激情を思い、俺の背に悪寒が走った。

 一体、何を…

「それじゃあ、初めて」

 桂月の命を受け、瀬崎と橋立がベッドへと乗り上げてきた。

「な、何を…」

瀬崎が手錠に戒められた俺の腕を押さえつけ、橋立はむき出しの太ももを抱えて大きく押し開く。
 もしかして、もしかしなくとも。

 こいつら…俺を、強姦する気か?



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