「守也!!」
それからほどなくして、王雅様が屋上へと駆け込んできた。
肩で息をする王雅様の姿に、俺の目に涙が滲む。
「王雅様…」
俺は何をやっているんだ。
王雅様をお守りするつもりが、何もかも空回りして、迷惑ばかりかけて。
やることなすこと、失敗してばかり。
王雅様のしもべとして、あまりにも不甲斐ない。
「ようこそ、王雅様。歓迎するぜ」
滝口は俺を抱いたまま、不遜な態度で王雅様を迎える。
「貴様の申し出通り、一人で来てやったぜ。言うとおりにしたんだ、守也を放せ」
「まあ、そうことを急くなよ。せっかくおいで下さったんだ、精一杯おもてなししてやるから、ゆっくりしていきなって」
「ふざけるな、何がもてなしだ!! 守也に…っ、そんなことしておきながら…!!」
こちらの方へと詰め寄ろうとした王雅様を、周囲の不良たちが押さえつける。
「お前ら、そのまま抑えてろよ。殴っちゃ駄目だぜ。一応、王雅の御曹司なんだからな、怪我でもさせたらあとが面倒だ」
「止めろ、王雅様に触れるな…っ、うあ!!」
「隊長さんはこっちに集中な。もてなしのメインディッシュは、あんた自身なんだからさ」
「な…」
王雅様の目の前で、俺をいたぶって遊んでいる男を、呆然と見つめ返す。
滝口が、何を考えているのか分からない。
王雅様を呼び出したのは、王雅様自身が目的ではなく、俺との行為を見せつけるために、のようだが…
「何が…何がしたいんだ、お前は!」
「あんたを嬲って貶めるだけじゃ駄目、王雅様を直接狙うのも駄目。なら、どうするか。俺はない脳味噌なりに、必死に考えた。答えがこれだ。王雅様の前で、あんたを犯してやりゃあいい」
「な…? あああっ…!!」
意味が分からず眉をひそめる俺を無視し、滝口は再び身体を動かし始める。
「さあ、可愛い声を王雅様に聞かせてやれ」
「や、いやだ…! あ、あ…うあ、ああっ…」
「止めろ、守也を放せ!! 守也、守也っ!!」
滲む視界の向こうで、王雅様は不良たちから身をほどこうと、必死にもがいている。
「王雅様、あんたも馬鹿だな。弱みを握られたくなけりゃ、大事なものなんて作るなよ。守りたいものがあんなら、よそ見なんかしてねえで、掌の中に大事に囲い込んでろ。じゃねえと、こんな風に横から掻っ攫われて、タチの悪い輩に食われちまうぜ?」
「あ、あ…」
滝口は嘲笑うようにそう言って、身体の中に吐精した。
俺の中から引き抜き、固唾を飲むように見守っていた周囲を、ぐるりと見渡す。
「さぁて、次はどいつがやる? 早いもん勝ちだぜ。隊長さんも、さすがにここにいる全員は相手に出来ねえだろうしなあ」
周りから、ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえる。
「なあ、王雅様。隊長さんがぶっ壊れるまで、何人相手になると思う?」
「…頼むから、止めてくれ…!! 何でも、するから…」
美しい瞳から涙を流して、王雅様は力を失ったように項垂れた。