「お願い、聞いてくれねーの?」

 困ったように薄く笑い、男は俺の頭を床に叩きつけた。

「ぐっ!」
「なー、頼むよ。俺も命令されてんだよ、ボスにさ。任務が遂行できねーと、俺がボコられんだよ。頼む、俺の顔も立ててくれって」
「…出来ないものは、出来ない」
「強情だねえ。これくらいじゃ落ちねえか。んじゃ、仕方ねえから定番コース、行っちまうか」

 そう言って伸ばされた手に、ブレザーの前を開けられ、ボタンを引きちぎるようにシャツを脱がされる。
 まさか、俺相手に性的暴行を加えようとしているのだろうか。
 途方もなく馬鹿馬鹿しい心地になって、俺は笑った。

「は…俺のような男らしい男相手に、使い物になるわけないだろう」
「それがそーでもねーんだなぁ。暴力と性欲は、案外似通ったもんなんだぜ。ボコってるうちに勃ってるなんて、よくあることだろ? じゃねーと、制裁として使えねえしな」

 軽口を叩く間にも、ベルトを外され、下着ごとズボンを取りはらわれる。

「へー、結構ご立派だねぇ。ツラも悪かねーし、親衛隊の隊長やってるより、親衛隊に祭り上げられてる方が似合ってるぜ、アンタ」
「興味ないな…っぐ!」

 あらぬ場所にひきつるような痛みを感じ、俺は呻いた。

「ああ悪ぃ。痛かったか? 何せ、慣らすようなもんがなくてなあ。指が痛ぇなら、このままぶち込んでやろうか?」
「っ…!」

 軽い口調の中に本気を感じ、俺は青ざめた。
 暴力を振るわれるだけならいい。殴り合いのケンカは、回数こそ多くはないが経験したことはある。それと何ら変わらない。

 だが、今から行われようとしている暴力は全く別だ。
 男としての俺を貶めるために、苦痛で以って苛もうとしているのだ。
 未知の恐怖に、みっともなく身体が強張る。

「滝口さん、俺等、代わんなくていーんすか?」
「ああ…今日はこのままヤるわ、俺」
「珍しいですね…滝口さん自ら手を下されるなんて」
「ま、たまにはな。こいつ、面白ぇし」

 笑い声と同時に、衝撃が来た。

「あっ…ぐ、ああ…!」

 身体を引き裂かれる激痛。
 逃れようと身をよじらせるが、逆に腰を掴まれ引き寄せられ、より深く貫かれる。

「いっ…! あ、あああ!!」
「はは、ガタイに似合わず可愛い声出すねえ、隊長さん。俺、燃えてきたわ」
「く、う…」

 揺さぶられる苦痛に、漏れる呻きと滲む涙。

「あーあ、泣いちゃったなぁ、可哀想に。痛いのか? 辛いんだったら、止めてやってもいいんだぜ……俺の頼み、聞いてくれたらな」
「いやだ…!」
「ちっ…面倒臭ぇ野郎だな、っと!」

 いくばくか温度の下がった声音で呟き、滝口は俺の身体の中に、情欲の名残を排泄した。


「お前ら、スタンバイ出来てるか?」

 滝口は俺の中からずるりと自身を引き抜いて、傍観していた二人の生徒に声をかける。

「へへ、ばっちりっす。最初はきついかなーって思ったけど、ヤってるとこ見てたら、結構イケそう」
「確かに、中々いたぶり甲斐のある獲物のようで。面白そうですね」
「よーしよし。強情な隊長さんのプライドも根性も、ずたぼろに打ち砕いてやれ」
「っ…」

 まだ当分は終わりそうにない蹂躙に、俺は気の遠くなりそうな絶望を感じた。


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