「ぐ、ううっ…」
ひどい、ひどい、ひどい!
俺は後ろはまっさらなのに、乱暴にもほどがある!
俺がやる時は、慣れた子に対してでも、もっとじっくり、蕩けるように愛撫してあげるのに!
「周君…」
苦痛に呻く俺の傍に、桂月が立った。
冷汗に濡れた俺の髪を拭う桂月の手はどこまでも優しいのに、俺の身体を苛む手は、残酷で冷淡だ。
「周君、後ろは初めてなんだよね?」
「当たり、前だろ!!」
「ふふふ、よかった。初めてじゃないなんて言われたら、何するか分からないところだったよ」
「桂月…?」
桂月の笑みに冷ややかなものを感じて、俺はいぶかしむ。
「本当は君の前の初めても欲しかったんだよ。ねえ覚えてる? 君の最初の男が誰か」
「最初…」
「そう。確か、君のもとルームメイトだっけ? 転校しちゃったね、僕と君が付き合いだしてから」
そうだ。俺の最初の彼氏。可愛くて、気の優しい、この学園に来て初めてできた友達だった。
お互い後腐れなく別れたはずなのに、俺と桂月が付き合い始めたことが、そんなにショックだったんだろうか。
「彼ね、僕が追い出しちゃった。今の、周君と同じことをしたんだ」
「な…っ!」
「だって、顔も見たくなかったんだもの。僕の大好きな周君の初めてを奪っておきながら、悠々と僕の目の前を歩くなんて、許せないじゃない。
だから、追放したんだ」
「そんな…」
「酷いと思う? でもそれだけ僕は、周君を愛してるんだよ。
本当は、君が関係を持った男全部そうしたいとこだけど、さすがにそれはやりすぎだって、生徒会の皆にも止められちゃった。
だから必死に我慢してたのに、君は…!」
「あう!」
桂月が、瀬崎の触れるのとは反対の乳首に爪を立てる。
「もう、限界なんだ。君が僕以外の男を抱くなんて許せない」
ぎぎぎ…と爪が俺の肌を滑ってゆく。皮膚が薄く裂け、白い爪痕となって残る。
「君は僕のものだ、周君。初めても、今も、これからも、全部、全部、僕のもの」
優しく、穏やかな性格の桂月が見せた、初めての激情。
妄執にも近い俺への執着は、他人からすれば恐ろしいものに映るだろう。
だが俺は、こんな場合だと言うのに、桂月の俺への想いの深さに、感動を覚えていた。
愛されているのだと、痛いほどに実感したのだ。