とても残酷で、それでも何故か愛しくて 「最近、あんまり来ないね。」 「うん、ごめんなさい…トム、毎日来てたの?」 「うん、君に会いたいからね。」 「……そう、ごめんなさい。」 「謝らないで。…疲れてるの?」 「ちょっとね。」 「何か、困ってるの?」 勉強の息抜きに、と一週間ぶりにあの場所にやってきた。一週間も行かなかったからいないかと思ってたけど、トムはいた。 どうして彼が私に執着するのか、本気で分からない。森の近くなら私以外にも蛇はいるはずなのに。もしかすると、私と会う以外にも、他の蛇と会ってるんだろうか。やだ、何股してるのよ、この浮気者。……なーんて。 トムは眉を下げて私の体を撫でる。こんなに普通の男の子なのにな、……蛇相手には。「私の巣の近くに変な動物が増えてね。」 「変な動物?」 「うん。大きな、黒いもの。多分蜘蛛かな、足がたくさんあったし…。トムの腕に抱えられるくらいの大きさだったわ。」 「…蜘蛛が、苦手なの?」 「別に苦手じゃないけど、ちょっと怖いわね。私よりずいぶん大きいし。」 「……へぇ。」 大きな蜘蛛がよく現れるのは本当だ。まぁ、この一週間の話じゃないし、夜中の話だけどね。ローブを着た大きな生徒が散歩をさせにくる。あんなに大きな生徒は中々いないから、寮も学年も違う私でも知ってる。彼はグリフィンドールの3年生、ルビウス・ハグリッドだ。あの蜘蛛が危険なのかは分からないし、摘発する気もないんだけどね。 「急に現れたなら、誰かが持ち込んだ可能性が高いな。」 トムは顎に手を当てて考え込むように下を向いていた。 「そんなに本気で悩まなくていいわよ。何かされたわけじゃないわ。」 「でも、君が困ってるなら。」 「いいの。もうすぐ…テストってものがあるんでしょ?そんなことに手を煩わせなくていいわ。」 私がそう言うと、トムは私の口にキスをした。蛇の姿とはいえトムにキスされた…。急なことで、私は思わず固まってしまった。……人間の姿だったら絶対に体温が上がっていたと思う。 それにしても蛇にキスするなんて、この人は一体なんなんだろう。 「…トム、私なんかにキスするくらいなら、彼女にしてあげなきゃ。」 「…彼女?…あぁ、あれ。まぁ、したこともあるけど…あれは彼女の父親にとりいるために仕方なくだよ。」 仮にも彼女を、あれ呼ばわりとは。 「あれ、だなんて。酷いなぁトムは。」 「そうかな?……君が人間だったら良かったのに。」 トムは悲しそうに微笑んで私を撫でる。彼の言葉に、胸が痛んだ。 私は人間だよ、トム。あなたの大嫌いなマグル生まれの、あなたができそこないと称した、ハッフルパフの、魔女。 |