何度も空に夢を見た 「ごきげんよう、リドル。」 「やあ、バーツ。」 人の多い廊下の壁にもたれかかる私の前を、爽やかな笑顔の男女がすれ違う。その男の方をジッと見て、やっぱり蛇みたいだと思う。 蛇に向ける笑顔と、人間に向ける笑顔が違うんだもの。人間に向ける笑顔は爽やかで優しげな顔。私、蛇に向ける顔は、心から楽しそうだけど、どこか嫌みったらしい顔だ。どちらが本当の彼かと聞かれたら、後者かもしれないけど、前者かもしれない。彼は本当によく分からないな。 私の胸元できっちり締まっている黄色と黒のネクタイを見下ろしてため息をつく。私は蛇のアニメーガスなのに、どうしてスリザリンに入らなかったのか?もちろん、私が狡猾じゃなくて、マグル生まれだからだ。おかしな話だ。どうして私はアニメーガス、しかも蛇なんかになったんだろう。本当に、両親が蛇が大好きだったから、神様が授けてくださったんだろうか。 考えるのが面倒くさくなってきたからもうそれでいいや。それより私は、このかばんの中にぎっしり入っている本を読破しなければならない。学年末試験まであと3ヶ月。トムなんて、今年はふくろうのはずなのに、どうしてあんなに余裕なんだろう。平凡な脳みそしか持ってない私にはかなりキツイのに。 トムが消えていった方向を見つめながらまたため息をつく。彼は今日もあの場所に現れるだろうか。ごめんなさい、私今日は魔法薬学の勉強をしなきゃ。…変身術のアニメーガスの欄は完璧なんだけどな。トムに是非教えて貰いたい、なんて、蛇の姿でも人間の姿でも、言えないけど。 |