出会う ランチタイムを外れた時間、俺たちの他に、店内には2人しかいなかった。カウンターの端っこにサンドイッチを食べるおじいさん、窓際の席に、書類を広げる自分たちより年上の男。 カウンターの向こうで何かを作るライカーさんの手つきをジッと見つめる。いちいち手を上下させるその行動に、実に違和感を持った。 「そんなに珍しいかい?」 リリーに愛を囁いていたジェームズが俺の視線に気付きどうでもよさそうに尋ねる。俺はこくりと首を縦に1度動かした。うーん、家でも杖や腕を振れば適当にメシは作れたので、包丁とかいう刃物で、手を使って何かを作るのを見るのは新鮮だった。家でも学校でもメシを作るのは屋敷しもべだったし。 「お母さん、遅 くなってごめんなさい。ネズミがいてね…あ、お客さん!来てたのね。手伝います!」 カウンターの奥から顔を出した人物が、少し高めの声でそう喋った。 栗色の長い髪を三つ編みにして前に流した女性だった。頬をホンの少し染めて困ったような顔をする彼女は、可愛らしかった。 「あ、シリウス、あの子だよ。エリちゃん。」 横でジェームズが言う。あぁ、あの子が。確かにジェームズが認めるだけあって可愛らしいが、可愛いとか美人な女は今まで山ほど見たので特に特別な感情も抱かずに、「へぇ、そう。」とだけ言っておいた。できるだけ冷たくならないように気をつけて。 「あら、いいわよ。もうできるし。それよりほら、お客さんをよく見てみなさい。」 ライカーさんが優しくその子に微笑むと、その子はこちらを見て、パァッと表情を明るくしカウンターを飛び出した。 「リリーちゃん!久しぶりだねぇ。」 リリーはパッと腰を浮かして、その子とハグをした。 「ハリーくんに、ジェームズくんに……」 リリーから体を離し、ハリー、ジェームズと目を移動させてから、その子と俺は目が合った。 「初めまして、エリさん。ジェームズとリリーの友人です。」 俺がそう言って愛想笑いすると、こちらもつられそうになるほどエリさんは目を大きく開け、徐々に顔を真っ赤に染めた。その反応は、ホグワーツ時代に俺が「おとしもの」と言ってハンカチを渡したときの女の子の後輩の反応にそっくりで、なんだか懐かしさを感じた。それより今の俺、な んかレギュラスみたいで嫌だな。 エリさんは口をパクパクさせて「あっあ、の、えっと」と言葉にならない言葉を発してから、カウンターの方にすごい速さで戻っていった。その反応に、リリーとジェームズがこらえきれないというふうにクスクスと笑っていた。ハリーは両親の様子を見て、訳もわからずニコニコと笑っていた。可愛い。 |