鬼ごっこの箱庭 | ナノ





囁く





「やぁ親友、遅刻しないとは関心だね、乗りなよ。」

土曜日の昼13時。家の前には青い車が止まっていて、運転席には眼鏡をかけた、くしゃくしゃの黒髪の若い男、助手席には燃えるような長い赤毛にキラキラ光る緑色の目をした若い女、その膝の上には男そっくりのくしゃくしゃの黒髪と、女そっくりの緑色の目をした小さな男の子がいた。
俺は数日前に決めていた服装に身を包み、おとなしく後ろのドアを開けて乗り込んだ。俺が座ったのを確認して、男は車を発信させた。

「やっぱりリーマスは来なかったか」
「うん、やっぱりね。」
「シリウス、おはよう」
「シリウスおじさん、おはよう!」
「おはよう、リリー、ハリー」

後ろを向くリリーと、リリーの肩ごしに俺を見るハリーに、挨拶を返す。ハリーが可愛すぎて思わず顔が緩む。

「シリウス、その顔キモイ。といいたいところだけどハンサムはどんな表情でも似合うね。その顔、女の子が見たら鼻血出すんじゃないかな」

席の真ん中にある鏡越しに俺を見るジェームズが明らかに呆れを声に混ぜて言った。悪かったな、ハンサムで。

「シリウス、前私がみとめた服着てきたのね。良かったわ、奇抜な服着て来られなくて。もし着てたらお店の人になんて説明しようかと、ドキドキしてたわ。私そのお店の常連だから、変に思われたくなかったの」

リリーはニッコリ笑いながら言う。ちょっと毒が入ってる気がするのは、気のせいだと思うことにする。

「おじさんの服、普通だよ?」

ハリーは何も分からずにニコニコと俺を見た。あー、ハリーの笑顔見るだけで俺生きていける。そう口に出すと、ハリーの両親はなんて言うべきかわからなかったのか、うーん、と唸った。
1時間ほど車を走らせると、俺たちの車は少し古いが雰囲気の良い店に着いた。

「私のママの古い友人がやっているお店でね、小さい頃から時々来ていたの」

リリーはハリーの手をつなぎ、喫茶店の扉を開けた。カランカランと綺麗な音が鳴り、リリー、ジェームズ、俺の順番に中に入った。
全体的に落ち着いた雰囲気で、魔法界の入口にある小汚いパブなんかとは大違いに綺麗だった。比べるのもどうかと思うが。マグル界の喫茶店になど入ったことがなかったので、内心少しドキドキしていた。

「ライカーさん 、こんにちは」
「まぁ、リリーちゃん。それにハリーくん、ジェームズくんも。よく来たね。何ヶ月ぶりかな。その後ろのハンサムな彼は、ご友人?」

カウンターにいたリリーより少し背の高い女性に、リリーが話しかける。濃いブロンドの長い髪を頭の後ろでくくり、黒いシンプルなエプロンをつけた女性は、年配だがとても落ち着いた雰囲気で、その澄んだ青い目を向けられて俺は一瞬ドキリとした。

「あー、はい。ジェームズとリリーの旧友で…シリウス・ブラックといいます。」

柄にもなく緊張した俺の声色に、長い付き合いの親友が気づかないはずはない。一瞬肩を震わせたのを見て、あとで足を思い切り踏んづけてやろうと思った。

「そう、シリウスくんね。旧友ってことはリリーちゃんたちと同い年なのかしら?」
「そうです」
「あらそうなの。今日は、リリーちゃんたちに誘われて?」
「あ、そうで」
「いやぁ違うんですよライカーさん。僕がここに可愛い店員さんがいるよって言ったらシリウスがどうしても行きたいって言い張って」
「…はぁ!?」

4人席の俺の隣に座ったジェームズが俺のセリフを遮り俺の肩に手を回しニヤニヤと笑った。そういえば確かに可愛い店員がいるとか言ってたが、それを理由に行きたいなんて一言も言っていない。

「そんなこと言ってな」
「あらまぁ、可愛い店員さんだなんて。あの子もきっと喜ぶわ。あの子面食いだから。どこに行ったのかしら、あの子…お酒置き場の掃除はもう終わってるはずなのにねぇ。」

今度はライカーさんに遮られ、俺は思わず口を噤む。目の前に座るハリーが顔をギリギリ机の上に出し、父親のニヤニヤ顔を不思議そうに見ていた。可愛い。
俺がここぞとばかりにジェームズの足を思い切りふんずけてやると、ジェームズは痛みに悶えて俺の方から手を離した。

「あ、ご注文は何かしら?」
「ランチだから、いつものをお願いします。」
「わかったわ。ちょっと待っててね。そのうちエリも来るだろうから。」

リリーがいつもの、と言ったのが何かはわからないが、ライカーさんが俺に可愛らしくウインクして去っていったのに俺は苦笑いするしかなかった。中年女性、という言葉が実に似合わない綺麗なライカーさんの茶目っ気あふれるウインクには不思議と不快感はない。同い年くらいの女のウインクは不快なのに。エリというのは店員だろうか。完全にその子目当てに来たと思われている。

「プロングス、変なこと言うなよ。俺は別に女あさりに来たわけじゃねーよ」
「なんだ、せっかくお膳立てしてあげたのに。エリちゃんは本当に可愛いし器量良しだし良い子だよ?あ、もちろんリリーが一番だけどね!」

親友はバチンとハートを飛ばさんばかりに目の前の嫁にウインクをする。リリーはハリーにお料理楽しみだねーとか話しかけて完全に無視していた。それでも、フォローしないとリリーの機嫌が悪くなるのは俺もジェームズもわかっている。ハリーは母親に頭を撫でられニコニコと笑っていた。可愛い。







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